都内在住40代後半のDINKS夫婦の世帯年収は2800万円だが、浪費やバツイチの夫が払っている養育費などの影響で、貯金は500万円程度。カードローンの残債が200万円ある。加えて、夫がマンション購入した同僚に刺激を受け、「ウチも買う」と5000万円の住宅ローンを組んだ。月15万円の返済は余裕のはずが、妻はがんになって、夫もコロナ禍で残業時間がなくなり、世帯年収は3割減。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんがこうしたピンチを回避するための対策として挙げたのは——。
モダン住宅アパートフラットビル外観
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世帯年収2800万で金融資産少ない世帯「見込み甘すぎ」でハマった沼

金融広報中央委員「家計の金融行動に関する世論調査」(令和2年)によると、2人以上世帯が保有する金融資産の平均額は、前年の1139万円から1436万円と1.26倍に増加した。先日は、30年ぶりに日経平均株価が3万円台に回復した。株式や投資信託など収益性商品を保有している世帯の評価額はさらに上がっただろう。

その一方で、金融資産を保有していない世帯が一定数いる。格差は広がるばかりだが、金融資産ゼロ世帯でも現役世代ならば毎月の給料が入ってくるので、あまり困らないかもしれない。ただ、年金世代になると、そうはいかない。

いずれにしろ、金融資産がないということは家計に“体力”がなく、脆弱ぜいじゃくな可能性が高い。放漫な家計管理のツケが病気やケガ、失業、災害などをきっかけにして、一気に襲ってくる、というケースは少なくない。

筆者はファイナンシャルプランナー(FP)として、これまで多くのマネー相談を受けているが、その中には「見込みが甘すぎる」事例も多い。その実態を紹介しよう。

借金があるのに、家を買いたいと言い出したバツ1の見栄っ張り夫

この相談を受けたのは、今から5~6年ほど前のことだ。

首都圏で働く内山蓉子さん(仮名・当時40代後半)は、複数の外資系企業に転職してキャリアを積んでいきたいわゆるバリキャリで、年収は1300万円。同年代の夫も年収1500万円以上の会社員で、子どもはおらず、住まいは駅近くの賃貸マンションである。

年収や属性だけを見る限り、多少ぜいたくをしたとしても数千万円の金融資産があってもおかしくないのだが、貯蓄はほとんどないに等しい。蓉子さん名義の定期預金が300万円程度で、夫は、クレジットカードのリボ払いの借金が200万円ほどあった。

貯蓄ができない最大の理由は、夫の浪費体質。ブランド物や高級車などに興味はないが、交友関係が広く、外食や旅行に行ったときに気前よく払ってしまう、やや見栄っ張りな性格。さらに、夫はバツ1で、別れた妻との間にできた2人の子どもへの養育費などで、給料のかなりの部分が消えてしまう。

しかも、これまで何度も転職して、収入がゼロの期間もあり、子どもの進学費用などまとまったお金が必要な時には、蓉子さんも援助せざるを得ない状態だったという。

それなのに、夫が急に「家を買いたい」と言い出したことが相談のきっかけだった。