洋品店を営む男性(53)が男手ひとつで育てたひとり娘(18)が今冬、大学受験に挑む。合格・進学するのは国立大か私立大か。学費は約2倍違う。進路先によって、今後の父子家庭の生活レベルや男性の老後資金を貯める見通しに変化が出る。受験本番を前にファイナンシャルプランナーの横山光昭氏が家計をより筋肉質にするためにアドバイスしたこととは——。
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老後資金を貯めたい53歳自営業者の命運握る、娘の大学受験

「娘が大学進学するのですが、行かせても自分の老後資金を作れるでしょうか」

娘さん(18)とともに家計相談に来たのは、父親のUさん(53)。ひとりっ子の子供が小さいときに奥さんと死別し、以降、洋品店を営みながら2DKのアパート(賃料6万8000円)で、父子2人で暮らしてきました。コロナ禍にありながら自営業は比較的順調で、手取り月収約31万円と収入も安定している。家計は毎月2万円の黒字です。

大学進学を目指す娘さんは現在、公立高校の3年生。父子で相談にいらしたのはコロナ禍の昨春。資金を心配するには時期が少々遅いと感じましたが、奨学金の説明会などに参加し、ようやく学費など進学資金について意識し始めたというところのようです。

娘さんが希望する進学先は、父親の貯金のことも考慮し、学費負担が少ない国立大学が第一希望です。滑り止めで私立大学を受けるのですが、第一希望に受からず、私立に行くことになった時、もしくは受験に失敗して浪人して予備校代などをかけてしまうようになったらどうしたら良いかということを、娘さんなりに心配しています。

Uさんは頑張って仕事も家計も切り盛りしてきましたが、今の貯金額は830万円。私立大学に通うとなると、4年間の授業料などの学納金で半分ほどなくなってしまうイメージです。貯金を増やすために生活費の見直しをするとともに、学費の負担の仕方も検討したほうがよさそうです。

貯金や家計の全体像を把握するため、収支の状況から伺いました。収入は毎月31万円前後。国民年金保険料や国民健康保険料、住民税を除いているので、全額を生活に回すことができます。支出を見ると、大きく無駄を感じる支出はなく、努力されてきたのだろうと思わされます。

浪費はしていないが、まだまだ支出は削れる。すべては学費のために

この状態の中であえて支出を削減できるところを探すなら食費、通信費、生命保険料でしょう。

食費は現状、月5万6000円。自炊が少なく、総菜や弁当用の冷凍食品の利用が多いということなので、自炊を増やせば支出を下げられる可能性が高いです。仕事が忙しく、帰宅後はなかなか料理をする気になれないということでしたが、休日などを利用して作り置きしたり、娘さんにも協力してもらったりすれば、効率よく楽しい食卓が作れるかもしれません。

通信費(月2万3000円)は、その大部分を占めるスマホ代を下げられると、節約効果が長続きします。今は割安な新料金プランが各社から続々出ているので料金をかなり下げられます。店の電話をスマートフォンで受けているなどしていて、格安なものに抵抗がある場合でも、契約内容を見直すだけで利用料が下がる場合もあります。今のままを続けるよりは、自分たちの使い方を見直して、使う分だけの契約にすることが得策です。

娘さんも学校の友達に格安スマホを使う子が増えていますし、大学生になったらアルバイトをして自分の支出は自分でまかなえるようにしようと考えているようです。

また、生命保険(月3万2000円)には今は必要ない保障が隠れている場合があるので、保障内容が適正か、過剰な保障がついていないかを見直すことで、支出を下げられる可能性があります。

このように支出の見直しをしていくと、ざっと5万円は支出を減らすことができそうです。娘さんが大学に進学するとまた、支出状況は変わるかもしれませんが、あと半年以上は、これまでの黒字2万円に加えて5万円、計7万円を蓄えていくことができます。