コロナ禍を契機にあふれ出した世界的な緩和マネーは行き場を失い、ちょっとした材料に反応して株価を釣り上げる危うさがある。株価はすでに「高所恐怖症」に近い水準。高値圏にある株価が一気に急落する局面を心配する声も聞かれ始めた――。
東京証券取引所
撮影=プレジデントオンライン編集部
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世界の中央銀行が市中にばらまいた過剰なマネー

株価上昇が続いている。新型コロナウイルスの感染拡大により世界のGDP(国内総生産)は、第2次世界大戦の直後以来で最大のマイナス成長に落ち込んでいる。にもかかわらず米国のニューヨークダウは3万ドル台に乗せ、日本の日経平均株価も2万6000円台と、バブル崩壊後の最高値圏にある。

なぜ、新型コロナ禍で疲弊する実体経済をよそに、株価だけがこれほど高騰するのだろうか。そこには新型コロナ禍に対処するため、緊急避難的に世界の中央銀行が市中にばらまいた過剰なまでのマネーの存在がある。

新型コロナ禍が本格的に世界経済をむしばみ始めた今年3月、日米欧の主要6カ国の中央銀行は新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済クラッシュを回避するため、ドル資金を大量に市場に供給する「ドル流動性供給オペ」を拡充・実施した。

コロナ禍を受けドル資金の需要が急速に高まり、「市場でドルを調達することが困難になった」(大手機関投資家)ためで、邦銀などによる日銀オペの利用残高も一時2000億ドルを超えた。

日本銀行
撮影=プレジデントオンライン編集部
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FRBが米国債を担保にしたドル資金貸し出し対象を拡大

この「ドル流動性供給オペ」の本尊は言うまでもなくFRB(米連邦準備制度理事会)であり、FRBはカナダ中央銀行、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行、スイス中央銀行、日本銀行と常設的な通貨スワップ協定を結びドルを供給している。

コロナ禍が本格化した3月中旬にFRBはこの「ドル流動性供給オペ」に、従来の1週間物に3カ月物を新たに加え、その後、オペの頻度も週1回から毎日に変更した。さらに通貨スワップ協定に基づくドル供給先をブラジルや韓国などの9中銀にも拡大した。

そして3月末にFRBは、米国債を担保にドル資金を貸し出すレポ取引の対象を、ニューヨーク連銀に口座を持つ200以上の中央銀行や国際機関に拡大した。新興国のドル資金不足を支援することで、ドル建て債務のデフォルト(債務不履行)を防ぐためだ。