あふれるマネーが世界を徘徊している
こうしたFRBによる潤沢なドル資金の供給もあり、世界の金融市場は安定を取り戻している。2008~2009年のリーマンショックへの対応が学習効果となって、ドル債務危機を回避できた格好だ。
だが、問題はリーマンショックと異なり、今回のコロナ禍が「第2波」「第3波」と波を打つように継続していることである。その都度、欧米の金融当局はさらなる金融緩和に踏み込み、あふれるマネーが世界を徘徊していることだ。
そしてFRBが供給した大量のドルが向かっているのが世界の株式市場である。
ゴールドマン・サックス証券は11月10日、日経平均株価の2021年の目標値を2万7200円に引き上げた。また、野村証券も同日、2021年末の日経平均株価を2万8000円と予想した。新型コロナウイルスワクチン開発・普及までには時間を要するものの日米の景気・企業業績は底堅く、金融緩和の継続から金利は上がりにくく株価は堅調に推移するとみているためだ。
イエレン元FRB議長の財務長官指名が後押し
この有力証券会社による強気の株価見通しを後押しするのはバイデン次期米国大統領によるジャネット・イエレン元FRB議長の財務長官指名だ。
初の女性財務長官となる見通しのイエレン氏はニューヨークの下町、ブルックリン出身。1929年の大恐慌を体験したユダヤ系の医師と教師の家庭に生まれた。
ブラウン大で経済学を専攻し、イェール大大学院に進んだ。そこで師事したのが『インフレと失業の選択』(日本語版はダイヤモンド現代選書=1976年刊)の著者でノーベル経済学賞を受けたジェームズ・トービン教授である。
「私にとって失業率は単なる統計数字ではない」と語るイエレン氏の哲学はトービン氏譲りと言われる。
雇用問題の専門家で、「温厚な性格で、周囲の意見に耳を傾けつつも粘り強く相手を説得するタイプ」というのが知人の共通したイエレン評だ。親日派でもある。
特に「イエレン氏はトランプ大統領からFRB議長に再任されず、2018年に退任したが、ブルッキングス研究所で活発に金融政策を論じている。炭素税の導入を提唱するなど環境問題にも明るい。バイデン氏は経済格差問題などでイエレン氏の助言を求めていた」(市場関係者)とされる。