「財政と金融の連携もスムーズにいき株式市場の安心感も増す」

イエレン氏は民主党リベラル派や米女性団体から圧倒的な支持を得ている。

上院は共和党、下院は民主党が過半数を握る“ねじれ”が生じる可能性があるだけに、議会対応に長けたイエレン氏の財務長官就任は適任だ。

市場関係者は「バイデン氏は4年間で2兆ドルという過去最大規模のインフラ投資を公約しており、米国の歳出増は避けられない。FRB議長時代から金融緩和に積極的なハト派で知られたイエレン氏が財務長官に就けば、財政と金融の連携もスムーズにいくだろうから株式市場の安心感も増す」と見ている。

世界の中銀による緩和マネーは株式市場に流入し、11月は記録的な上昇が相次いだ。世界株全体の値動きを示す「MSCI全世界株指数」は上昇率、上昇幅とも1988年以降で最大となった。

特に買われたのは新型コロナの影響を受けて10月まで出遅れていた銘柄だ。

米市場では航空需要の激減を受け急落していたボーイングが1カ月で5割近く上昇したほか、シティーグループなどの金融株、シェブロンなどのエネルギー株も3~4割も上昇した。

また、日本株でも景気敏感株を中心に物色されている。

株価はすでに「高所恐怖症」に近い水準にある

しかし、こうした新型コロナウイルス感染症に関連した銘柄高騰には一抹の危うさも伴う。東証が11月中旬に新型コロナワクチン関連の銘柄について異例の注意喚起を行ったのはその端的な表れだ。

東証はすべての上場企業に対して、コロナ関連の事業展開について「公正な開示」をするよう注意喚起を行った。

これについて市場関係者は、「中国企業と提携し、インフルエンザで開発中のワクチンを新型コロナにも試すという情報を発信した企業が投資家の期待買いでストップ高になったものの、実態が乏しく株価が急落、結局、破産した。こうした風説の流布に近いと思われるような未確認情報で拙速な買いに走らないよう注意を促したものだ」と解説する。

コロナ禍を契機にあふれ出した世界的な緩和マネーは行き場を失い、ちょっとした材料に敏感に反応して株価を釣り上げる危うさがある。市場のボラティリティ(変動幅)は高まりつつある。株価はすでに「高所恐怖症」に近い水準にあると見ていい。高値圏にある株価が一気に急落する局面を心配する声も聞かれ始めた。

「実はダイヤモンドがひそかに売れているんですよ」(市場関係者)というのはそのシグナルかもしれない。