53歳になる長女はこれまでの一度も働いたことがない

母親は高齢で働いていませんが、年金月18万円に加え、家賃収入が月5万余りありました。財産も現金で2500万円。長女との暮らしに月18万円かかっていますが、家計はゆとりがあります。

一方、53歳になる長女はこれまでの一度も働いたことがありません。聞けば、小さい頃からおとなしく、周囲になじめなかったそうです。自己主張をすることもなかったためか、中学生の頃にいじめの標的にされてしまいました。

最初は陰口くらいだったのですが、抵抗しない人間だとわかるといじめはどんどんエスカレート。授業中に本人にわざと聞こえるように「バカ、死ね」などと言われる状況が毎日続きました。教員も「面倒なことはご免だ」といった様子で、まったく助けてくれません。

授業中は黙って下を向き、体を震わせながら屈辱に耐え、休み時間になるとトイレに駆け込んで一人泣く。教室に返ってくると鞄や教科書がゴミ箱に捨てられていた、ということも何度もありました。そんな状況では勉強に集中できるはずもなく、成績もどんどん落ちていきました。

そんなある日、自宅で長女の感情が爆発。「もう学校に行きたくない。このまま死んでしまいたい。だからお母さん、あたしを殺して!」そう大声で泣き叫びました。驚いた両親は長女を自宅で休ませることに。しかし、長女の様子は一向によくなりませんでした。

手を前に突き出し、拒否する女性
写真=iStock.com/asiandelight
※写真はイメージです

その後、長女は「田舎にある祖父母の家で過ごしたい」と申し出たため、その通りにしました。学校に行けなくなってしまった長女を祖父母は温かく迎え入れてくれたそうです。長女は祖父母とともに穏やかに過ごしてきました。

母親亡き後の長女の収入は計月11万7000円だが…

それから数十年後。祖父母が亡くなったため、まずは母親が田舎に移住。父親は仕事をリタイアした後に移住をしました。両親の移住をきっかけに、元住んでいた自宅は売却。その資金で東京に賃貸マンションを購入したそうです。それを現在、貸して収入を得ているのです。

長女は現在もたまに感情の起伏が激しくなることもあるようですが、心配するような精神的疾患はないとのこと。国民年金の支払い状況を確認したところ、20歳からずっと両親が納付してきたそうです。60歳まであと7年なので、このまま納付し続けたいとのことでした。

以上の話をふまえると、長女が65歳からもらえる老齢基礎年金は月額で約6万5000円。さらにマンションの家賃収入が月額5万2000円。母親亡き後の長女の収入は、合計月11万7000円になります。母親亡き後は、引き継いだ貯金(現状2500万円)を少しずつ取り崩しながら生活をしていけばお金の面では何とかなりそうだ、という見通しが立ちました。

そこで筆者は母親に告げました。

「月額11万7000円の収入があれば、お金の心配はそれほど深刻にお考えいただかなくても大丈夫だと思います。もちろん、今後も家賃収入が入り続けるといった条件つきですが……」
「そうなんです。実はそのことについてもご相談があるのです」

母親はそう言い、筆者にある資料を手渡してきました。