「そんなに家賃収入が増えるんですか。でもなぜ2物件買うんですか」

面談当日。筆者とT氏は母親の自宅を訪ねました。ひきこもりの長女も話を聞きたい、という希望があったからです。リビングに案内されると、すでに長女は椅子に座って待っていました。顔色はそれほど悪くなく、挨拶をする様子にも特に違和感はありません。

4人で軽い日常会話を交わした後、T氏は、2種類の資料をテーブルの上に広げました。

「ご家族にご提案させていただく物件はこの2つになります」

【物件①】
■価格 780万円
■物件購入後の収入と支出の予定(月額)
家賃収入 6万2000円
(支出)
マンション管理費および修繕積立金 1万3000円
固定資産税 月額換算で4150円
手取り収入は4万4850円
【物件②】
■価格 720万円
■物件購入後の収入と支出の予定(月額)
家賃収入 6万円
(支出)
マンション管理費および修繕積立金 1万3500円
固定資産税 月額換算で3825円
手取り収入は4万2675円

資料に見入っているご家族にT氏は説明をしました。

「買い替えする2つの物件はいずれも中古で、購入額は合計で約1500万円。つまり、所有している東京のマンションを売却することで購入でき、ローンを組む必要はありません。家賃収入は2つの物件合わせて月12万2000円(※)で、管理費や固定資産税などを引いた手取りで月8万7525円。今よりも月約3万5000円のアップです」

※不動産会社A社の物件の場合、家賃収入(諸経費や固定資産税を除く前)は月7万9000円だったので、収入額に月4万円以上の開きがある。

統計、電卓とボールペン
写真=iStock.com/Hanasaki
※写真はイメージです

家賃収入は2物件合わせて月12万2000円、月約3万5000円アップ

それを聞いた母親は目を丸くしました。

「そんなに増えるんですか! でも物件を2つ購入するんですね。それには何か理由があるのですか?」
「はい、もちろんあります。それは退去リスクの分散です。お客様(店子)が退居された後、次のお客様が入居するまで多少時間がかかってしまいます。もちろん、その間の家賃収入はありません。1物件だと家賃収入が途絶えてしまうので、そのリスク回避をするためです」
「なるほど、そうなんですね。ちなみに、これらの物件は長い間空室になる可能性はありますか?」
「それは何とも言えません。ですが、これらの物件は駅近でファミリータイプなので人気はあります。2つとも10年以上ご入居されている物件(店子が現在もいる)ですし、長くお住まいになっていただける仕様になっています。また、仮に空室になってしまった場合でも、(不動産業者である自分たちが)できるだけ早く次の方がご入居できるように手配いたしますのでご安心ください」
「それは心強いです。あと、お願いがあるのですが、不動産管理や確定申告、入居者とのトラブル対応もそちらにお願いをすることはできますでしょうか?」
「はい、大丈夫です。委託管理料として2物件分で月額3280円を頂戴しますが、それでよろしければこちらですべて対応します」

それを聞いた母親はほっとした表情を見せました。