不動産を買い替える際にかかる税金は…約90万円

安堵する母親には悪いと思いつつ、筆者は少し気になることがあったので、あえてそれを口にしました。

「不動産を買い替えるので、登録免許税や不動産取得税もかかりますよね? どのくらいの金額になりそうですか?」

それに対してT氏はこう答えました。

「はい、登録免許税と不動産取得税が2物件で合計90万円ほどかかります。これらのお金は貯蓄から取り崩す形になるでしょうか」

一万円札
写真=iStock.com/minianne
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母親はあまり気にしないといった様子で応じました。

「それらのお金は仮にA社の物件を購入する場合でもかかりますよね? もちろん同じ金額ではないでしょうが。ですが、買い換えによってかかってしまうお金であれば、それは仕方がないことだと思います。大丈夫です」

長女が65歳になるまでの12年間で約1000万円たまる

さらに、長女のお金の見通しを立てる上で退居リスクに備える必要もあると感じた筆者は、ご家族にある提案もしておきました。

「家賃収入のほとんどを貯蓄されると思われますが、その貯蓄の一部を別会計で管理するようにしていただく方が望ましいです。なぜなら、退居が発生するとその部屋はリフォームをする必要があるからです。ですので、毎月の家賃から1万円くらいはリフォーム用資金として別会計で管理することもご検討ください」
「はい、わかりました。そのようにします」

ここまでのお話をふまえ、筆者はお金の見通しを立てることにしました。

■長女が「65歳になるまで」の貯蓄予定額

家賃の手取りから不動産管理委託料と毎月1万円のリフォーム用資金を除くと約7万4000円。長女が現在(53歳)から65歳になるまでの貯蓄予定額は7万円4000円×12カ月×12年で約1000万円(母親が存命で、母親の年金収入があることが前提)。

■長女が「65歳になった後」の手取りの見通し(月額)

(収入)
・老齢基礎年金 6万5000円
・2物件の家賃 12万2000円
合計 18万7000円
(支出:諸経費など)
・2物件の管理費、修繕積立金 2万6500円
・2物件の固定資産税(月額換算) 7975円
・不動産管理委託料 3280円
・リフォーム用の貯蓄 1万円
合計 4万7755円
(長女の手取り)
約13万9000円

筆者は家族に告げました。

「ご長女は65歳になるまでの12年間で貯蓄が少なくとも約1000万円たまる可能性があります。お母さまがお亡くなりになったとしても、ご長女は65歳以降も年金と家賃収入(諸経費を除く)で月計13万9000円の収入があります。試算をすると、仮にご長女の生活が65歳から平均余命の89歳まで続いたとすると、月々の生活費が17万3000円を超えなければお金の心配はそこまで深刻にならずに済みそうです」