一番の問題は相手がお客さまという意識が欠落していること。でも、それは相手が職場の上司や先輩の場合でも同じ。だから、友だち言葉で返答してしまうのだ。上司への業務報告を絵文字入りの電子メールで送ってくるのも、もはや珍しいことではなくなっている。

商社で働く小林百合子さん(仮名)は、入社1年目の男性の後輩に「明日中にこのレポートをまとめて、メールで私のところに送っておいてね。次の日のお昼の会議の資料として使うから」と頼んだ。「わかりました」と元気のいい答えが返ってきたので、小林さんは安心して任せていた。

しかし、翌日の夕方になってもレポートのメールは入ってこない。本人のデスクに目を向けると、資料をかたわらに置いて一生懸命にキーボードを打っている。「新人とはいえ、半日もあれば十分に終わる仕事なのに」。取引先との会食の約束の時間が迫ってくるのにつれて、小林さんの不満は募っていった。結局、タイムアウトとなり、仕方なく小林さんは職場を飛び出した。

翌朝、メールチェックをした小林さんは驚いた。確かにレポートのメールは入っていた。しかし、その時刻は何と「23時59分」。新人君を呼び出して「ちょっと遅いんじゃないの。もう少し早くから取りかかれば、夕方には十分できたでしょう」と小言をいうと、「でも指示のあった昨日中には送ったはずです」と答える始末。当人は涼しい顔だ。自分の行為が相手にどのような影響を及ぼすかまで、どうやらこの新人君は頭が働かないようである。

そんなトラブルを数え出したら切りがない。「フロントの仕事をしたい」とホテルを志望してきた新卒が入社直前の研修に金髪姿で現れ、「本当に接客業務に就かせていいのか」と採用担当者が頭を抱えたり、コンサルティング会社に入社しながら「やっぱり消防士になりたかった」といって、入社1カ月もしないうちに退職したり……。毎日どこかの職場で上司や先輩社員の悲鳴があがっている。

(宇佐見利明=撮影)