しかし、そんな問題含みのゆとり世代とはいえ、採用した人材は企業にとって貴重な戦力であることに間違いはない。現場で成果をあげていけるように育てていく必要がある。そこで注目されているのが、ゆとり世代の新入社員の意識を切り替え、働くことへのモチベーション・アップを図る研修である。先ほどのシェイクでは30人ほどの人事担当者を対象とした新人社員研修セミナーを開催しているが、「案内と同時に定員が埋まってしまう」(森田英一社長)という。
同社の研修では、なぜマナーを身につけることが必要なのかを学びながら、社会人として意識を高めることに力を入れる。顧客だけでなく、社内の上司や先輩も、社会に出たての新入社員の能力をほとんど信用していない。もし信用されて仕事を任されたいのなら、何らかの“証明”が必要だ。そして、新入社員がすぐできる証明が、外見、言葉遣いといったマナーだとわからせる。「それまでサービスを受けていた側から、今度は提供をする側に変わったのだという最初の切り替えが肝心。ゆとり世代の特徴である『根拠のない自信』に対しては自分の思い通りにならないのが社会であることをわからせ、『のんびり志向』に対しては頑張らないと見捨てられるくらいの危機意識を持たせることが重要だ」と森田社長は語る。
図4を見てもわかるように、コミュニケーションをとる方法として、ゆとり世代は相対よりもメールを好む傾向が強い。上司が指示を与えようとしたら、「メールでください」といってきたゆとり世代の新入社員がいたという笑い話のようなケースもある。そうしたことが非常識であることも理解させていく。
また、自分の好きなことをあまりにも重視するためなのか、配属先が希望と違うと途端にヤル気を失ってしまうゆとり世代の新入社員も多い。大手商社で貿易業務を志望したのに、配属されたのは国内での繊維の取り扱い業務で、転職を考え始めた新入社員がいた。「その業務を通して学ぶべきことは数え切れないくらいあるし、これからチャンスはいくらでも巡ってくるといい聞かせるのに苦労した。何の根拠もないのに、自分ならできると変な自信を持っているようだ」と説得に当たった人事担当者は振り返る。