図1:教育機関への公財政支出の対GDP比(2005年)
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図1:教育機関への公財政支出の対GDP比(2005年)

ことほどさようにトラブルメーカーの新入社員が増えた背景には一体何があるのだろう。その答えの一つとして関係者が口を揃えて指摘するのが、学校で本格的なゆとり教育を受けてきた「ゆとり世代」が社会に出始めてきたことである。

ゆとり教育は、1970年代に落ちこぼれや非行で教育現場が荒廃し、その原因が詰め込み教育にあったとの反省から、学習内容を減らした教育のこと。77年の学習指導要領の改訂を受けて、80年度から「ゆとりと充実」「ゆとりと潤い」を重視する教育が始まった。学習指導要領は学校がカリキュラムを編成する際の基準で、全国どこでも一定の水準の教育が受けられるように文部科学省が告示する。法的拘束力もある。

それに続く89年の改訂では子どものヤル気や関心を重視した「新しい教育観」が導入され、個性を生かした教育の充実が92年度から実施される。この時点で教師は「教える」立場から、「育む」「支える」立場へ変わったといわれる。そして、ゆとり教育をさらに推し進め、現在関係者の間で問題視されているのが98年の改訂である。

そこでまず打ち出されたものが、完全週休5日制への移行だ。これによって年間の登校日は約200日へ激減した。さらに輪をかけるかのように「総合学習」の時間が新設されたことで、国語、算数、理科などの基礎科目の授業時間が大幅に削られた。それにともなって学習内容はさらに薄くなり、たとえば70年代に約60あった中学校の理科で習う化学式の数は10未満になってしまったという。

この新学習指導要領が実施された2002年度が、本格的なゆとり教育のスタートとされる。08年4月に大卒で入社した社員は、その本格的なゆとり教育を高校時代に受けた“ゆとり第一世代”なのだ。さらに今後は中学校、小学校で洗礼を受けた世代が続々と社会に出てくる。そこで「学力が低いうえに、社会的な訓練もできていない人材が増えるのではないか」と懸念されているわけである。