※取材を行った2020年3月23日時点では、隈本さんはリクルートコミュニケーションズの所属でしたが、4月より株式会社リクルートに主務出向しています。
平均年齢30代半ばの若々しい環境
ショッキングピンクの背景に、白抜きの〈ゼクシィ〉の文字が映える。それだけで十分目を引くのだが、さらに底部に豆電球が煌めいている。
「店頭で目を引くためにつくったんですよ」
隈本悟はいたずらっぽい笑みをこぼした。彼がおもむろに取り出しテーブルに置いたのが、自身が考案した結婚情報誌『ゼクシィ』の販促ラックだった。このラックを設置した店舗では、2割から3割ほど『ゼクシィ』の売り上げの伸びが期待できたという。
現在、63歳の隈本が、リクルートに入社したのは、1980年のこと。リクルートグループは、社員の独立を支援する制度もあり、平均年齢が30代半ばと非常に若い。隈本は、グループのなかでも希有な社歴40年の大ベテラン社員である。
販促ラックを手がけた2012年当時、隈本はリクルートが発行した媒体の流通や販促を手がける部署にいた。
『ゼクシィ』をもっと多くの人に届けるためにはどうすべきか。
当該店舗で使えるクーポン券などをつけ、取扱店舗を増やしていった。しかしには膨大な数の雑誌が並ぶ。スペースの小さい店舗のなかには厚みのある『ゼクシィ』の上に、別の雑誌を重ねるケースもあったという。
そこで、隈本は思いつく。棚に『ゼクシィ』専門の販促ラックを設置してみたらどうだろう、と。
「ラックを設置すれば、毎月の最新号をそこに置いてもらえるはず。従業員の方々の習慣になるのではないかと考えました」
ラックにはソーラーチャージャーを搭載した。定期的に交換が必要な電池では、莫大なコストがかかる。また電池が切れて光らなくなったラックは廃棄されてしまうかもしれない。
それに、と隈本は笑う。
「たとえばコンビニは24時間365日ずっと蛍光灯が点っている。ソーラーチャージャーが壊れない限り、ラックは光り続ける。半永久的に利用してもらえるでしょう」
いかにもベテランらしい、したたかな気遣いである。同時に、飄々とした口調から軽やかな遊び心が感じられた。