しばしば暴走して政治を混乱させてきた人物が…

遅々として進まなかった憲法改正問題が、にわかにあわただしくなってきた。新たに自民党の憲法改正推進本部長に就任した衛藤征士郎衆院議員が矢継ぎ早に動いているのだが、衛藤氏という政治家は、しばしば暴走して政治を混乱させてきた人物。憲法論議でも、早くもその気配が出始めた。憲法改正に距離を取ってきた菅義偉首相も想定しない展開になってきた。

自民党の憲法改正推進本部役員会であいさつする衛藤征士郎本部長(中央)=2020年10月8日、東京・永田町の同党本部
写真=時事通信フォト
自民党の憲法改正推進本部役員会であいさつする衛藤征士郎本部長(中央)=2020年10月8日、東京・永田町の同党本部

衛藤氏は最近、自身のツイッターで改憲に向けた決意を発信している。

「自民党憲法改正推進本部長に就任。2009年から今日まで、106回の会議、役員会39回、有識者ヒアリング37回、起草委員会12回開催。新たに自民党憲法改正原案起草委員会を設立。年末迄に党の改正原案をまとめ上げ、憲法審査会に提案したい。勿論、連立与党と緊密に連携し万全を期す」(10月9日
「国会に憲法調査会、審査会が設置されて20年、海外視察11回。憲法改正、自民党は過般の選挙で4項目の改正を公約して勝利した。しかし、今日まで憲法改正原案を提案していない。自民党憲法改正原案起草委員会は年末迄に改正原案をまとめ上げ、憲法改正の使命と責務を果たす」(10月15日

いずれも、長い間議論が行われてきたことを指摘して、改憲に向けてアクセルを踏む決意を示したものだ。

改憲推進本部長に就任後、衛藤氏の鼻息は荒い。だが、自民党内ではそんな衛藤氏を警戒混じりの冷ややかな目で見つめる。政治家・衛藤氏の政治手法と憲法観をにらみ、憲法論の前途を悲観的に見ているからだ。

「ミスター議連」スタンドプレー先行との評価の衛藤氏

衛藤氏は79歳。参院1期、衆院12期を務めた長老議員。衆院副議長の経験もある。こう書くとどっしり落ち着いている印象を受けるかもしれないが、実はそうではない。新しい政策、国民受けしそうなテーマに飛びついて、議員連盟の会長や幹事長、事務局長などに収まることが多かった。

衛藤氏のホームページをみると今も数え切れない数の議連に籍を置き、会長、幹事長など要職に就いてることが分かる。最近では、「ゴルフ議連」の会長として、国家公務員倫理規程が禁じている官僚の利害関係人とのゴルフ解禁に向けて動き、注目されたことがある。

衛藤衆院議員が名誉会長・会長を務める議連

ただし、この時もそうだったが、マスコミで注目されるテーマを取り上げて目立とうという雰囲気が強く、周囲には、スタンドプレーに映ることも多かった。