菅政権は安倍内閣の弱点をあっさり克服した

菅義偉首相の船出は、順調のようだ。内閣支持率は上々。行政の縦割りを排除して規制改革を行うという姿勢も評価されている。当初ささやかれた10月初旬の衆院解散、「10・25選挙」の線は消えたが、次は年明けの1月選挙説が本命視されはじめた。

「唯一の誤算は内閣支持率が予想以上に高いことだ」

自民党幹部の1人は冗談交じりに打ち明ける。NHKが9月23日に公表した世論調査では菅内閣の支持率は62%。他の新聞、テレビの支持率も6割台から70%超となっている。政権発足時に内閣支持が上がるのはよくあることだが、7割前後という数字は、特に人気の高かった細川護煕、小泉純一郎、鳩山由紀夫の3政権に匹敵する。

どちらかというと地味な印象のあった菅氏がこれほどの「高値スタート」となるとは、菅氏自身も思わなかっただろう。

公明党の党大会で、壇上で山口那津男代表(右)と両手を上げる来賓として出席した菅義偉首相=2020年9月27日日、東京都千代田区
写真=時事通信フォト
公明党の党大会で、壇上で山口那津男代表(右)と両手を上げる来賓として出席した菅義偉首相=2020年9月27日、東京都千代田区

7年8カ月続いた安倍政権の内閣支持はおおむね40%台から50%台で安定していたが、安保法制を制定したり憲法改正を目指したりしてタカ派イメージが強かったこともあり、女性の支持率が低かった。菅氏の場合「パンケーキ好き」というソフトイメージ戦略が功を奏しているのか、女性の支持率も高い。菅政権は安倍内閣の弱点をあっさり克服したのだ。

自民党若手はほぼ全員が「即解散」を主張しているが…

さて、ここで問題となるのが衆院解散の時期である。想定外の高支持率で自民党議員たちは、浮ついている。今、衆院選が行われれば勝利確実なのだから当然だ。下村博文党政調会長は21日のBS番組で「自民党の国会議員のほぼ総意、即解散。若手はほぼ全員が早く選挙をやってもらいたい」と党内の空気を代弁している。

だが、菅氏は、下村氏のいう「即解散」の道は選ばない考えだ。菅氏も世論調査の数字を重視していないわけではない。7年8カ月の官房長官時代、毎週のように各社の世論調査についての質問を裁いてきた。誰よりも世論調査の結果に敏感だといってもいいだろう。

菅氏に近い政府関係者によると、菅氏は世論調査で3つのデータを注目しているという。

1つ目が「内閣支持率」、2つ目が「内閣が優先して取り組む課題」、3つ目が「衆院解散のタイミング」だ。

共同通信社が9月16、17の両日に行った世論調査を基に分析したい。