「常駐さん」たちが真っ先に切られた
崖っぷち。そう聞いていたのに、脅えるどころか余裕すらある。
「100人の部署だと、常駐さんは40人ぐらい。全員、契約打ち切りになりましたが、正社員への影響はまだ出ていません」
ソニーのエレクトロニクス部門で研究職を務めるAさん(33歳)はそう語る。「常駐さん」とはソニーの正社員ではなく、人材会社に所属する派遣社員のこと。システム設計など高度で専門的な業務を請け負うため、人件費は1カ月で200万円以上に及ぶ。
「常駐さんたちの人件費は他社と比べても異様に高かった。いま減らすのは当然の理でしょう。彼らはほかの会社にくら替えするだけのはずですから、いわゆる『派遣切り』とは事情が違う」
1月22日、ソニーは会見を開き、2009年3月期の連結営業損益が過去最大となる2600億円の赤字に転落するとともに、赤字が続いている液晶テレビ事業の再編を柱に2月中旬から正社員を対象に希望退職者を募る、と発表した。これは昨年12月に打ち出した国内外で1万6000人を削減する計画の一環で、約2000人を対象に割増退職金を支払う希望退職制度の導入が実施される見通しだ。
自社のHPで会見の内容を知ったAさんは、こう受け止めた。
「赤字は淡々と受け止めました。過去のパターンを考えれば、人員削減を打ち出した時点で、赤字に転落することは薄々わかっていました。それより、今回も優秀な人からやめることになるはず。そっちのほうが心配です」