新聞やテレビなどの情報を有効活用する方法が平易に説かれている。池上氏はベテランのジャーナリストであり、情報のプロだ。その経験が果たしてビジネスマンなどの参考になるのか、という疑問をぶつけると、ジャーナリストも一般の人とニュースソースが著しく異なるわけではない、と言う。その好例が、国際政治の情報戦だ。
「諜報活動をする人たちの情報源の98%は、対象国の新聞などの公開情報です。それをどう加工するか、が彼らの腕の見せどころになる。新聞などから得た複数のインフォメーションを掛け合わせ、新しい視点を導き出す。その視点がインテリジェンスです。皆さんもニュースソースを活用して、自分のインテリジェンスを仕上げてみたらいかがですか、というのが本に込めたメッセージです」
ジャーナリストもCIA職員も、一般の人と同じニュースソースをフル活用している。我々一般人も工夫次第で、情報のプロたちと同様の洞察力を身につけることができる、というわけだ。また、ジャーナリストとビジネスマンは同じ、というのが池上氏の持論だ。
「例えば、記者が警察のところに行って、なにかありますか?と漠然と聞いても何も答えてくれません。情報収集を行い、それを基に自分の読みを立ててから質問すれば、警察もこちらに一目置くようになる。仮説を持って取材に行くから、相手との信頼関係が生まれるのです。それはビジネスなどの営業活動でも同じでしょう。いい結果を生むのは相手との良好な信頼関係です。相手から信頼を得るためには、入手できる情報から、自分なりの仮説を立てることが重要なのではないでしょうか」
情報と、それを基にした仮説の重要性を説く池上氏が、最近気になっていることがある。
「ネットの普及で、探している情報へ即座にコンタクトできるようになりました。それ自体は悪いことではない。しかしその分、ムダと思われる情報、いわばノイズとでもいうものに触れる機会が減っています。例えば、新聞を読むときや本屋に行ったとき、探していた情報以外の個所が目に留まることがある。普段から問題意識を持っていれば、新聞の活字や書店の書籍が、その問題意識に自らアピールしてきます。振り返ると、こうした情報こそ役に立つことが多い。一見ムダ、と思われるノイズに触れるためにも、新聞を読んだり書店に行く、という行動は続けたほうがよいと思います」
多忙を理由に情報のインプットを怠りがちなビジネスパーソンにこそ一助になる一冊だ。