山で命を落とした仲間は、55人。いずれも、気力、体力、精神力、技術を鍛え抜いたクライマーたちだった。

<strong>小西浩文</strong>●こにし・ひろふみ 登山家。1962年、石川県生まれ。15歳で登山を始め、82年、20歳で中国の8000メートル峰・シシャパンマに無酸素登頂。97年には日本人最多となる「8000メートル峰6座無酸素登頂」を記録。現在、世界8000メートル峰全14座無酸素登頂を目指して活動中。
小西浩文●こにし・ひろふみ 登山家。1962年、石川県生まれ。15歳で登山を始め、82年、20歳で中国の8000メートル峰・シシャパンマに無酸素登頂。97年には日本人最多となる「8000メートル峰6座無酸素登頂」を記録。現在、世界8000メートル峰全14座無酸素登頂を目指して活動中。http://www.musanso.com/

何が死生を分けるのか。そんな問いから本書は生まれた。

著者である小西浩文さんは、6座の8000メートル峰無酸素登頂に成功している登山家だ。

「私自身、五度、山で死にかけました。若いころは、運に頼った登山を繰り返しましたから」

いつ逝っても不思議ではないような体験と仲間の死。漠然とだが「運だけでは説明できない、生還する人間と事故に遭う人間の差」を感じるようになった。

高所登山は、リスクとコストが伴う。人生のうち、ピークに到達できるチャンスは、そう何度も来ない。それでも、小西さんは、「登頂よりも優先すべき目的がある」と語る。

「最も大切な目的は、五体満足で還ってくること。頂上に登るのは、第二の目的にすぎません」

登頂に心が囚われると、臨機応変な判断ができず、危険な状況に追い込まれていく。

「生還するという本来の目的に集中していないから、心に隙ができてしまうのです」

危険地帯を越えて気を抜いた瞬間、事故が起きる場合も多い。

(公文健太郎=撮影)

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