全国の寄付金総額の「約10%」を集めた奇策
ふるさと納税制度に絡んで大阪府泉佐野市が総務省を訴えた上告審判決で6月30日、泉佐野市が勝訴した。最高裁第3小法廷が同市の請求を棄却した大阪高裁の判決を破棄し、総務省による対象除外の決定を取り消したのである。泉佐野市は「ふるさと納税の新しい制度の対象自治体から外されたのは違法だ」と訴えていた。
これで泉佐野市の逆転勝訴が確定した。最高裁第3小法廷の裁判官5人全員一致の判決だった。
まずこれまでの経緯を振り返ってみよう。ふるさと納税は、故郷や応援したい自治体の寄付が所得税や住民税で控除される制度だ。スタートした2008年度の寄付金額は81億円(2008年度)だったが、2018年度には5127億円と10年で60倍以上に急増した。寄付金を集めるために、自治体同士が過度な「返礼品競争」を繰り返した結果だった。
このため総務省は制度を変更。返礼品は寄付金額の3割以下の地場産品に限定するとして、総務相が参加自治体を指定する新しい制度を昨年6月に開始した。
総務省は新制度の開始前から全国に新基準を通知し、過度な返礼品の見直しを求めていたが、泉佐野市はインターネット通販アマゾンのギフト券を提供するなどして2018年度には全国の寄付金総額の10%近い497億円を集めていた。
最高裁「社会通念上、節度を欠いたと評価されてもやむを得ない」
次に判決の内容を見てみよう。
新制度の開始にともない、総務省は「過去に制度の趣旨に反して多額の寄付金を集めた自治体を除外できる」とする告示を行い、昨年5月に泉佐野市など4自治体を新制度から除外した。
しかし、最高裁は判決で「自治体に重大な不利益を生じさせる」と指摘し、「告示は総務省に委ねられている権限の範囲を超えている」と判断したうえで、「過去の募集方法を除外理由とした告示は違法で無効だ」との判決を下した。
その一方で最高裁は泉佐野市に対し、「返礼品を強調して寄付金の募集をエスカレートさせたことは、社会通念上、節度を欠いたと評価されてもやむを得ない」と言及した。裁判官の1人もその補足意見で「泉佐野市の勝訴となる結論にいささか居心地の悪さを覚える。眉をひそめざるを得ない」と述べた。
総務省の敗訴、泉佐野市の勝訴とはいえ、判決の真意は「喧嘩両成敗」にある。