「キャンセル料は国が持つべきだ」との批判の声も

政府が7月16日、「Go To トラベル」の対象から東京発着の旅行を外すことを決めた。新型コロナウイルスの感染拡大でダメージを受けた観光業への政府の支援事業がこの「Go To トラベル」で、需要喚起策「Go To キャンペーン」のひとつだ。22日から実施され、1人1泊あたり2万円(日帰りの場合は1万円)を上限に国内の旅行代金が補助される。

東京都内で新型コロナウイルスの感染者が急増し、地方への感染拡大を懸念する声が高まっていることが、方針転換の背景にある。

東京発着の除外とは、具体的には目的地を東京に設定している旅行と、東京に住んでいる人の都外への旅行についてそれぞれ外される。しかし、首都の東京が除外されることで、観光業への支援の効果は薄れる。かつ実施目前の方針転換であり、混乱が生じる可能性は高い。

たとえば、東京発着の旅行を外した「Go To トラベル」の対象かどうかの確認作業が複雑になる。旅行会社などが新たに旅行者に住所を確認する書類(住民票など)を求める必要が出てくる。

「Go To トラベル」を当て込んで夏休みの旅行を予約した人々からは「キャンセル料は国が持つべきだ」との批判の声も上がっている。

*キャンペーン開始の前日となった本日7月21日、国土交通省は、東京を補助の対象外にしたことで生じる旅行のキャンセル料の支払いを免除すると発表した。

「Go To トラベル」キャンペーンで、東京発着を対象外とする方針などについて記者会見で説明する赤羽一嘉国土交通相=2020年7月17日午前、国交省
写真=時事通信フォト
「Go To トラベル」キャンペーンで、東京発着を対象外とする方針などについて記者会見で説明する赤羽一嘉国土交通相=2020年7月17日午前、国交省

表面化した混乱を覆い隠そうとした「アベノマスク」と同じ

政府は7月10日、夏休みの需要喚起を狙って8月中旬だったスタートを22日に前倒しすることを発表した。だが、前日の9日には都内の1日あたりの感染者数が過去最多の224人を記録するなど、都内の感染が確実に拡大していた。

感染拡大を懸念する声は強く、本来なら政府は前倒しなどではなく、この時点で東京発着の旅行を外すべきであった。さらに「Go To トラベル」自体を中止に踏み切ってもよかった。

感染拡大の防止と社会・経済活動の再開。この2つはバランスの取り方が難しく、柔軟性が必要だ。しかし、今回の政府のやり方は、場当たり的で、愚行と批判されても仕方がない。

あの「アベノマスク」と同じである。アベノマスクでは全国の全世帯にマスクを2枚ずつ配布することで表面化した混乱を覆い隠そうとした。安倍政権の防疫対策を何とかよく見せようとした。かかった費用は総額260億円。しかも配布が始まると、不良品が多く、回収と交換などにさらに数億円の費用がかかるという。これでは税金の無駄遣いだろう。

大体、閣僚でもアベノマスクを着けているのは、安倍晋三首相ぐらいではないか。すべての国民に配布したマスクだ。なぜ閣僚の足並みがそろわないのか。