「菅対小池」の対立が「Go To トラベル」の在り方に火をつけた
コロナ対策をめぐっては官邸と東京都の間でさまざまな摩擦が起きている。
7月11日、菅義偉官房長官が北海道千歳市での講演で「圧倒的に東京問題と言っても過言ではないほど、東京中心の問題になっている」と話すと、小池百合子都知事は13日、「(Go To キャンペーンとの)整合性を国としてどう取っていくのか」と反論した。
結局、この菅氏と小池氏の対立が「Go To トラベル」の在り方に火をつけ、与野党や経済界、地方の首長らを巻き込んだ議論にまで大きく発展した。16日になって、「Go To トラベル」は東京発着の旅行を外すという形で縮小された。小池氏はこの日、記者団にこう言い放った。
「国として都民国民に対しての説明が求められるのではないでしょうか。国がよくご判断されることなんだろうと思います」
こうした発言からは、感染拡大で不安を抱く国民の気持ちを捉え、国や官邸にものを申して注目を浴びるという小池流の政治姿勢が見える。小池氏には、日本初の女性首相になるという強い野心がある。それゆえ、安倍政権に反発して自分の強さを政界にアピールしているのだろう。「Go To トラベル」という政府の政策まで自らの出世に利用する、小池氏の計算の高さには驚かされる。
「いったん延期して抜本的に見直すべきだ」
「これで不安が拭えるとは、とても言えない。この事業はやはり、いったん延期して抜本的に見直すべきだ」
こう訴えるのは7月18日付の朝日新聞の社説だ。見出しも「GoTo事業 立ち止まって見直しを」である。
沙鴎一歩はこの訴えに賛成だ。朝日社説は「Go To トラベル」の対象から東京発着の旅行を外すことに対し、「その対応は泥縄と言わざるを得ない」「問題の根底にあるのは、経済活動の再開を急ぐあまり、感染の実態から目をそらすかのような政府の姿勢だ」とまで酷評する。
朝日社説はさらには皮肉を込めてこう疑問視する。
「今後、首都圏や関西圏などでさらに感染が拡大した場合に、事業の対象地域を迅速に見直す用意が、政府にはあるのだろうか」
いまの安倍政権にはスピードをもって見直すことなどできないだろう。これまでの対応ぶりを見ていればそれはよく分かる。