民主派も「私たちが初の過半数を確保するのを潰すのが目的だ」と批判

香港政府が9月6日予定の立法会(定数70の議会)選挙を1年延期し、来年9月5日に実施することを決めた。

先月31日に記者会見した林鄭月娥(りんてい・げつが)=英語名、キャリー・ラム=行政長官は「1日あたりの新規感染者が100人を超える状況が10日間以上も続き、医療の崩壊が心配だ。予定通りの日程だと、安全で公平な選挙はできない」と延期の理由を説明した。

本当だろうか。感染拡大を懸念するというなら、たとえば関係者全員がマスクを着用して手も消毒し、投票所などでの防疫措置を徹底化すれば、問題はないはずだ。選挙運動中も同様な感染防止対策を行えばいい。

香港では、反政府活動を取り締まる国家安全維持法(国安法)の導入に対し、香港市民が強く反発している。しかも香港政府は中国の習近平(シー・チンピン)政権の傀儡かいらいだ。どう考えても、中国がこの市民の反発を抑え込もうとしていることは間違いない。民主派も「選挙の結果、私たち民主派が初の過半数を確保することをつぶすのが目的だ」と批判している。

「国家安全維持法」に反対するデモ隊排除に当たる警官隊=2020年7月1日、香港・香港島
写真=時事通信フォト
「国家安全維持法」に反対するデモ隊排除に当たる警官隊=2020年7月1日、香港・香港島

国際社会は批判の声を中国の習近平政権にぶつけるべきだ

立法会の選挙には303人が立候補した。しかし、民主活動家や民主派政党の現職議員ら12人が「国安法への反対姿勢」を理由に立候補の資格を取り消された。

選挙は民主主義の原点である。その選挙への立候補を強引に止めさせる行為は、たとえ合法的だとしても、民主主義の否定以外の何ものでもない。社会的にも経済的にも保障されていた香港の自由が消えてしまう。

今後、香港はどうなるのか。国安法は1997年のイギリスからの返還以来の、一国二制度に基づく高度な自治を否定する。高度な自治は返還後50年間継続されることが、中英共同宣言で保障されていた。中国の国際的約束違反であり、国際社会から強く批判されるべき対象である。

日本を含めた国際社会はいまこそ、批判の声をひとつにして中国の習近平政権に抗議すべきである。それができなければ、国際社会の存在価値が問われるばかりか、自国の民主主義体制もぐらつくことになりかねない。

空母の造船などの軍事力の強化、南沙諸島での“領土”の拡大、一帯一路の経済戦略、アフリカへの過度な進出、アメリカとの過激な対立など、中国は国際社会を無視した行いを続けている。世界第2位の経済大国とは思えない。今回の香港の立法会選挙の延期にしても、結局は自らの首を絞めることになる。どうして中国はそこに気付かないのか。