「緊急事態宣言のようなブレーキをかけたほうがいい」

新型コロナウイルス感染者ゼロだった岩手県で7月29日、初めて感染者が確認された。PCR検査で、盛岡市の40代男性と宮古市の30代男性の2人から陽性反応が出た。

岩手県は、鳥取県で4月10日に感染者が確認されて以降、3カ月半以上にわたって全国で唯一、感染者が確認されなかった。これまで達増たっそ拓也たくや知事は「感染者第1号になっても県はとがめません」と呼びかけていたが、31日には定例記者会見でこう述べている。

「3月、4月より深刻な状況。第2波とも呼べる流行の大きい波が来ている。政府には緊急事態宣言のようなブレーキをかけたほうがいいと注文した」

「第1号をとがめない」という意見には賛成だ。だが、緊急事態宣言を求めるのはいかがなものか。たしかに全国的に感染者が増加し、新聞やテレビは「連日の1000人越え」と伝えている。しかし浮足立ってはならない。トップである知事が落ち着いていないと、県民の不安は募り、事態が悪化するばかりである。

官邸に入る安倍晋三首相(手前)=2020年8月3日、東京・永田町
写真=時事通信フォト
官邸に入る安倍晋三首相(手前)=2020年8月3日、東京・永田町

感染力はそれなりに強く、だれもが感染する可能性がある

岩手県によると、盛岡市の40歳代男性は7月22日~26日にかけ、関東地方のキャンプ場に県外の友人3人と滞在した。その際、友人と車やテントに宿泊した。友人1人が28日に陽性となり、男性も県内でPCR検査を受けたところ、感染していることが分かった。のどに痛みがあり、せきも出ていた。

一方、宮古市の30歳代男性は27日に「地域外来・検査センター」を受診。その後、PCR検査を受け、29日に陽性が判明した。

新型コロナウイルスは今年1月に中国湖北省武漢うーはん市でオーバーシュート(感染爆発)を起こした後、WHO(世界保健機関)が3月11日にパンデミック(世界的流行)との認識を示し、現在もウイルスは世界中で感染の拡大を続けている。

振り返ってみると、新型コロナウイルスはコウモリなどの動物から人の世界に入ってきて1年もたっていない。まだまだ、人にとって経験したことのない未知のウイルスであり、私たちの大半は「獲得免疫」がない。従って感染力はそれなりに強く、だれもが感染する可能性はある。

そこで言いたい。岩手県で感染者が確認されたからといって慌てる必要はまったくない。これまで岩手県で感染者がゼロだったのではなく、きめ細かな疫学調査と検査の体制が整っていなかったために、感染が十分確認できなかったと考えた方がいい。