「安倍1強」の弊害がふるさと納税制度にも…

7月2日付の朝日新聞の社説は「ふるさと納税 政府の逸脱戒める判決」との見出しを掲げ、書き出しも安倍政権をこう批判する。

「法律に従い、法律によって与えられた権限の範囲内で、誠実に仕事をする。その基本をないがしろにした政府への強烈な警告と受け止めるべきだ」

朝日社説は「安倍1強」の弊害がふるさと納税制度にも表れているとでも言いたいのだろう。朝日社説は中盤でこう指摘する。

「後から自分で勝手にルールを作り、それを使って、意に従わない自治体を強引に抑え込もうとした政府が、一敗地にまみれた格好となった」

ルールとは新制度のことだ。このルールに泉佐野市が背き、提訴にまで及んだのだ。さらに朝日社説は指摘する。

「そもそも総務省内には、過剰な返礼品競争は『通知』だけではなく、法律でも規制すべきだという声があった。だが、ふるさと納税の拡大を主導した菅官房長官は『総務省が言えば、みんな言うことを聞く』とはねつけ、意見具申した担当局長はその後、異動させられた」

「国と地方は対等」という地方分権の理念

「総務省内での議論」「官房長官のはねつけ」「担当局長の異動」。ここまで書かれると、安倍政権の強引さが透けて見えてくる。朝日社説は書く。

「法の支配への理解を欠き、国会審議を軽んじ、『国と地方は対等』という地方分権の理念に基づいて設立された係争委の見解にも耳を傾けない。他の問題でも見られる安倍政権の強権的な体質が、随所に浮かびあがる。病の根は深い」

私たち国民は返礼品に目を奪われることなく、ふるさと納税の制度を創設した政権の意図を読み取る必要がある。

最後に朝日社説は「地方税は『自治体から受ける行政サービスへの対価』という原点に立ち返り、政府は返礼品の廃止を含めて、制度の再構築に乗り出すべきだ」と主張するが、自治同士が自由に競争することで活気を取り戻していく効果についてはどう判断しているのだろうか。

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