泉佐野市は「法律の枠の中で競争してきた」と反論
総務省と泉佐野市はこの喧嘩両成敗の判決をどう受け止めているのだろうか。
高市早苗総務相は最高裁判決のあった6月30日に「判決の趣旨に従い、できるだけ早く必要な対応を行う」とのコメントを出し、さらに7月3日には記者会見で「地方自治を所管する立場として、判決を重く受け止めている。地方団体に対する制度を立案する場合、より一層多角的な観点から検討を徹底させる」と話すとともに、ふるさと納税制度から除外した大阪府泉佐野市、和歌山県高野町、佐賀県みやき町の3自治体の制度参加を認めた。
泉佐野市の千代松大耕(ひろやす)市長も6月30日に記者会見を開き、「地方分権と言いながら多くの自治体が国の一方的な通知で悔しい思いをしてきた。地方自治の新しい一歩につながる」と最高裁判決を評価し、「ほっとしている。早期に復帰し、ふるさと納税制度の発展に貢献していきたい」と語った。
最高裁判決で「社会通念上の節度を欠いていた」との批判を受けた点については「法律の枠の中で競争してきた」と反論していた。
泉佐野市は、高価な肉類やアマゾンのギフト券などの返礼品で多額の寄付金を集め、自粛を求める総務省の通知を何度も無視し、総務省に「身勝手な自治体だ」と名指しの批判まで受けた。
今年1月の大阪高裁判決では、同市が敗訴しており、最高裁での逆転勝訴を喜ぶ千代松市長の気持ちは分かるが、この言動はどうだろうか。謙虚さに欠けるのではないか。
旧制度と新制度の「差」を検証する必要がある
沙鴎一歩は昨年5月22日に出した「泉佐野市のふるさと納税はやり過ぎなのか」という記事で、新制度を批判した。ふるさと納税制度の目的が、都市と地方の税収入の格差是正と地方の活性化にあり、旧制度には都市に集中する税収を地方に振り分ける大きな効果があったからだ。そこでは「新制度は自治体の過度な返戻金競争に歯止めをかけるだろうが、自由な競争を奪ってしまう」とも書いた。
日本は自由主義経済の国である。自由な競争は肯定されなければいけない。ただし、旧制度と新制度の「差」を検証する必要がある。つまり過当競争を抑制することで、本来の目的である都市と地方の税収入の格差是正にどれだけの効果の違いが生じたかをよく分析する必要がある。
仮にその効果が少ないという結果が出たら、「返礼品を寄付額の3割以下の地場産品に限る」という規制を緩めて競争を活性化させるべきだ。行政にもその都度、検証は欠かせない。とくに総務省や泉佐野市にはここを理解してもらいたい。