菅官房長官「健全な競争を期待する」のウソ
「ふるさと納税制度」が6月から新しくなる。
5月14日、総務省が自治体間の自由競争に委ねていたこれまでのシステムを許認可制に切り替えると発表した。
具体的には返礼品を「寄付額の3割以下の地場産業」に限定し、過度な返礼品競争を抑制する。総務相が基準を満たした自治体を指定し、その指定自治体でないと、税務上の優遇措置が受けられなくなる。
菅義偉官房長官は、この日午後の記者会見で「ふるさと納税は納められた地域の活性化に貢献しているのでしっかり継続してほしい。今後も使途や返礼品について知恵を絞り、健全な競争が行われることを期待している」と語った。
自治体間の自由競争を規制しておきながら、「健全な競争を期待する」とは解せない発言である。
泉佐野市など4市町が指定されず、東京都も不参加
総務省は、過度な返礼品で多額の寄付金を集めた大阪府泉佐野市や静岡県小山(おやま)町、和歌山県高野(こうや)町、佐賀県みやき町の4つの市町を新制度の対象から外すことを正式に決めたことも公表した。6月以降、この4市町と新制度利用を申し込まなかった東京都に寄付しても税制の優遇はない。
「ふるさと納税制度」とは特定の自治体に寄付すると、その寄付額から2000円を差し引いた金額について所得税と住民税から原則全額が控除されるシステムである。2008年度に作られた。目的は都市と地方の税収入の格差是正と地方の活性化だった。
しかし、多彩で豪華な返礼品で巨額の寄付を集める自治体が相次ぎ、全国の寄付総額は創設当初の81億円から2017年度には3653億円と45倍にも跳ね上がった。今回、指定を外された大阪泉佐野市など4市町は総務省の自粛要請に従わず、ネット通販のギフト券なども返礼品にして多額な寄付金を集めていた。
自業自得だろう。4市町は自ら首を絞めた格好である。
総務省によると、昨年11月から今年3月までの問題の4市町への寄付額は、泉佐野市332億円、小山町193億円、高野町185億円、みやき町89億円といずれも巨額な額で驚かされる。
ただ逆に言えば、4市町がそれだけ寄付金集めに奮闘努力した成果でもある。