過去最高の薬価となった治療薬「キムリア」

厚生労働省は5月15日、血液がんの白血病などに効く新しい治療薬「キムリア」に公的医療保険を適用することを決めた。その薬価(公定価格)は3349万3407円と3000万円を軽く越える。しかも1回分の価格だ。過去最高の薬価である。

公的医療保険が適用されると、患者の負担は少なくて済む。だが、薬価の高い薬は医療保険の財政を圧迫し、日本の医療を支える国民皆保険制度を破壊していく。抗がん剤を中心に最近、抗がん剤の登場が相次ぎ、大きな社会問題となっている。

白血病などの治療薬「キムリア」の保険適用を了承した中央社会保険医療協議会=2019年5月15日、東京・霞が関(写真=時事通信フォト)

キムリア(一般名・チサゲンレクルユーセル)は、これまでの薬と全く違う新しいタイプの薬だ。

患者の血液から免疫細胞(異物を攻撃するT細胞)を取り出してその遺伝子を操作し、がん細胞に対する攻撃力を高めてキムリアを作り出す。遺伝子操作された免疫細胞(キムリア)は、点滴によって静脈から患者の体内に戻される。

CAR-T(カー・ティー)療法と呼ばれる新タイプの免疫療法薬だ。世界トップクラスの製薬会社ノバルティスファーマ(本社・スイス/以下、ノバ社)が開発した。

薬というより、遺伝子操作による治療

キムリア製造の流れはこうだ。まず日本国内の特定の病院で患者のT細胞を分離して冷凍保存する。その冷凍T細胞をアメリカのニュージャージー州にあるノバ社の施設に送り、そこで遺伝子操作を施してキムリアを作る。その後で日本に運ぶ。

投与は1回で済むが、投与までの全行程に2カ月はかかる。患者ごとにその患者だけに使うキムリアを作って治療するオーダーメイド医療である。キムリアは薬というより、遺伝子操作による治療といったほうがいいかもしれない。

製薬や治療に高度な技術と専門的知識が求められ、その結果、薬価が跳ね上がるというが、それにしても1回の投与で「3000万円超」は、高すぎるのではないか。