グレープフルーツと薬剤で予期せぬ影響
甘さや酸っぱさの他、ほろ苦さも持ち合わせているグレープフルーツ。皮をむいてそのまま食べるだけでなく、ジュースに加工されたものや絞り汁の入ったサワーやカクテルを楽しむなど、私たちの食生活に欠かせない果物の1つであろう。
だが、このグレープフルーツを薬剤と一緒に摂取すると予期せぬ影響をもたらす可能性があると報告されているのをご存じだろうか。そこで、今回はグレープフルーツについて、薬剤との相互作用を中心に、論文をご紹介しながらお伝えしたいと思う。
その前に。1750年代、西インド諸島のバルバドスでブンタンとオレンジが自然に交配したものが発見されたことから、グレープフルーツの歴史は始まる。1800年代、ぶどうの房のように、1本の枝にたくさんの実を付けることからグレープフルーツと名付けられ、1830年ごろに米国のフロリダに、ついでテキサスやカリフォルニアなどにも伝わり、大規模生産が開始されるに至った。
米国から日本には1915年に伝わった。だが、寒さに弱いグレープフルーツは、日本の気候や環境では栽培が難しく、食卓まで届くことはなかった。昭和初期になり、日本への輸入が始まったものの、当時は高級なフルーツの1つであった。だが、1971年にグレープフルーツの輸入が自由化されたことによって、一般家庭でも気軽に食べられるフルーツになったというわけだ。
薬の代謝に欠かせない酵素「CYP3A4」
薬に話を戻そう。飲んだ薬は胃で分解され、大部分はその先の小腸で吸収される。そして、小腸を取り囲む血管から血液中に取り込まれ、肝臓へとつながる門脈に入る。肝臓へと運ばれた薬は血流に乗り体内を循環しながら患部へと到達し、薬の多くは、細胞の表面にある受容体と結合して反応を引き起こすことで効き目となって表れるのだ。
しかしながら、私たちの体にとって薬は異物である。ゆえに、体の中から排出されなければならない。その役割を担っているのが肝臓だ。役目を終えた薬は肝臓で代謝された後、腎臓に送られて尿として体外に排泄されたり、胆汁とともに消化管に運ばれて便として排出されたり、汗や唾液と一緒に体の外へと出て行くことになる。
つまり、肝臓を通過して血液にのって全身をめぐる薬の量は、小腸で吸収した量よりも少ない。そのため薬の内服量は、減ってしまう量を考慮して決められているというわけだ。
こうした代謝に欠かせないのが酵素だ。「シトクロムP450 3A4(CYP3A4)」は、半数以上の医薬品の代謝に関与している重要な酵素のうちの1つである。主に肝臓に存在しているが消化管にも存在している。