ジュースやジャムでも引き起こされる副作用

だが、この「CYP3A4」の作用を妨げるものがある。グレープフルーツだ。グレープフルーツに含まれるフラノクマリン類のベルガモチンやジヒドロベルガモチンと呼ばれる成分は、小腸をはじめとする消化管に対する阻害が強いため、薬が代謝されずに体内に長くとどまり続け、薬の血中濃度が上昇する結果、副作用が生じやすくなるという。

こうしたグレープフルーツと薬の相互作用はグレープフルーツそのものだけではない。ジュースやジャムなど、加工されたものでも引き起こされることがわかっている。なんと、グレープフルーツ1玉またはグレープフルーツジュース200mLで、全身の薬物濃度の上昇やそれによる悪影響を引き起こすのに十分なのだという。

グレープフルーツの他にも、フラノクマリンを含んでいるものは薬との相互作用を引き起こすことが指摘されている。フラノクマリンを含む果物として、例えば、マーマレードでおなじみのセビリアオレンジやハッサクがある。他には、スウィーティー、夏ミカンやライム、東南アジアのマレー半島が原産のポメロ、ミカンとグレープフルーツが交差されたタンジェロスなどが挙げられる。

85を超える薬に相互作用の可能性がある

『Canadian Medical Association Journal』における最近の報告によると、現在、85を超える薬がグレープフルーツと相互作用する可能性があるという。また、これらの薬物のうち43種においては、横紋筋融解症、呼吸抑制、消化管出血、腎毒性といった重篤な副作用をもたらし、その数は増加するだろうという。

具体的にはどういった薬が相互作用を引き起こすのだろうか。

1つ目は、コレステロールを下げるいくつかのスタチン系薬剤だ。シンバスタチンやアトルバスタチンなどが挙げられる。2つ目は、一部の降圧薬。ニフェジピンなどの高血圧の治療薬であるカルシウム拮抗剤だ。そして3つ目は、一部の免疫抑制剤。シクロスポリンなどだ。他にも、一部の抗生物質や真菌薬、抗精神病薬や抗うつ薬、睡眠薬など、極めて多くの薬の代謝に関わっている。これらの薬では、CYP3A4活性低下によって薬の代謝が阻害された結果、体内での薬の効き目が強まり副作用のリスクが高まるというわけだ。

だが、腸内のCYP3A4酵素の量は人によって異なっており、酵素をたくさん含んでいる人もいれば、ほんの少しだけの人もいる。そのため、グレープフルーツは、同じ薬を飲んだとしても人によって異なる影響を与える可能性を秘めている果物なのだ。