新薬の研究開発に着手しても販売に至るのは3万分の1

製薬会社の視点から毎日社説は「製薬会社にとっては、新薬の研究開発に着手しても承認されて販売に至るのはわずか3万分の1という事情がある。最近は免疫機能の活用や遺伝子組み換えが必要なためコストがかかる薬が多い」とも指摘する。

しかし、次のように指摘する。

「ただ、原材料費や研究開発費などの情報があまり公開されていないため、薬価を決める中央社会保険医療協議会では『製薬会社の言い値だ』との批判も出た。他の血液がんに適用を拡大していけば患者数は増え、さらに保険財政が圧迫される可能性がある」

「言い値」「適用の拡大」など前述した沙鴎一歩の意見と同じ意見である。

保険財政への圧迫を避けるにはどうすればいいのか。

毎日社説はその後半で「保険財政を守りつつ、患者が求める新薬の開発を進める方策を考えなければならない」と訴える。まさしくその通りである。だが、その道は厳しい。対策を練ってその対策を講じていく。これを繰り返して歩み進んで行く以外、方法はないと思う。

患者に恩恵を届けつつ、いかに医療費の膨張を抑制するか

5月21日付の読売新聞の社説もこう書き出す。

「医療の進歩に伴い、効果が高い一方、極めて高額な治療薬の登場が相次ぐ。必要とする患者に恩恵を届けつつ、いかに医療費の膨張を抑制するかが重要な課題である」

毎日社説と同じ訴えである。読売社説は「ただ、今後も超高額薬が増えていけば、医療保険財政を圧迫する懸念が拭えない」と指摘し、こう主張する。

「大切なのは、薬価が妥当な水準なのかどうか、検証できる体制を整えることだ」

見出しも「高額医薬品 価格の妥当性を見極めたい」である。

まず、製薬会社の「言い値」とまで批判されるような薬価の設定を廃し、薬価決定までのプロセスの透明化を図ることである。キムリアに関しては、ノバ社に製薬費用の詳細を求め、それが適切かどうかを専門家らが分析して議論する必要がある。最後に読売社説は主張する。

「公的医療保険で超高額薬をカバーしつつ、制度の持続可能性を維持するためには、軽症用の薬をどこまで保険給付の対象とするかを考える必要がある」
「湿布やビタミン剤など市販品で代替が可能な薬は、保険適用から除外する案も浮上している。議論を深めていくべきだ」

公的保険はどうあるべきなのか。国民医療費が増え続けるなかで、難しい課題が突きつけられている。

(写真=時事通信フォト)
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