「寄付とは、見返りを求めないもの」と言い切れるのか

ふるさと納税の新制度は、今後の地方自治体の財政に関わる大きな問題だ。新聞各紙は社説で取り上げている。いずれの社説も旧制度を否定し、自治体同士が競い合うシステムに疑問を呈する内容だった。沙鴎一歩は、それを残念に思う。

5月17日付の朝日新聞の社説は「しかし、自治体が多くの寄付を集めようとしてお得感を競う手法が問題となり、総務省が見直しを決めた」と指摘する。

さらに朝日社説は新制度で「寄付額の3割以下の地場産品」として残る返礼品をこう否定する。

「アマゾンのギフト券やiPadまで登場した返礼品競争を、和らげる効果はあるかもしれない。しかし返礼品が残る限り、お得感を競う風潮はなくならないだろう」
「そもそも寄付とは、見返りを求めないもののはずだ。『寄付額の3割以下』の返礼に法律でお墨付きを与えることの是非も、考えるべきではないか」

なんとも手厳しい指摘と主張である。豪華でなくとも、魚や野菜、果物、お菓子といったその土地の匂いのする、心の温まる地場産品がなければ、一般の国民は寄付などしない。

朝日社説は「寄付とは、見返りを求めないもの」と杓子定規に言い切っている。その自信は、一体どこからくるのだろうか。

「力ずくで地方を従わせるようなやり方」でいいのか

朝日社説は制度の問題点を挙げて「根本から考え直すべきだ」と主張している。

「制度が抱える問題点は多い。返礼品を選ぶ民間のポータルサイトへの手数料も含め、公的以外のものに貴重な税金がどれほど使われているのか、実態が見えない。所得の高い人ほど大きな税優遇を受け、自分が住んでいる自治体の税収を減らす矛盾も、放置されている」

こうした問題点の改善には賛成である。そして朝日社説はこう訴える。

「自治体は医療や子育て、介護、障害者福祉など、多くの社会保障サービスを担う。財源を中長期的にどうまかない、法人税や消費税など、どの税収からどの程度の割合を地方に回し、地方の中で配分していくのか。時代に合ったしくみを描いていかねばならない」
「批判のある返礼品競争を抑えるために、力ずくで地方を従わせるようなやり方では、真の地方自治を築くのは難しい」

その通りである。いまの安倍政権はその数の力を頼りに、自由な競争が可能だった「ふるさと納税制度」を、違うものに切り替えてしまった。