いま、20代から50代のビジネスマンの約半数が指摘されている病気がある。「脂肪肝」がそれ。ただし、医師から指摘されても、当のビジネスマン諸氏には「たかが脂肪肝」と侮っている人が多いようだ。しかし、それは脂肪肝を正しく理解していないからだ。

脂肪肝の先には様々な病気が待ち受けており、“終着駅”といわれる肝硬変にまで進むと、食道静脈瘤や肝ガンをも引き起こす。肝硬変から肝不全に至り亡くなるケースも多い。

脂肪肝の定義は、肝細胞を顕微鏡でのぞいたときに、100細胞中30細胞以上に脂肪が入っていること。つまり、肝臓に脂肪がたまりすぎの「フォアグラ状態」である。

脂肪肝を引き起こす原因には4つある。1、過食が原因の「過栄養性脂肪肝」、2、多量の飲酒による脂肪肝、3、糖尿病による脂肪肝、4、遺伝的高脂血症による脂肪肝。これをよりわかりやすく分類すると「食べすぎ」と「飲みすぎ」の2つである。

食べた脂肪は小腸から吸収され、脂肪酸とグリセリンに分解されて肝臓に届けられる。次に脂肪酸は肝臓で中性脂肪に合成された後、全身の脂肪細胞へ届けられるとともに、一部は肝臓にため込まれる。肝臓にため込まれる中性脂肪が多いと脂肪肝を生むことになる。

これが過栄養性脂肪肝だが、肉の脂身を食べなければ防げるという短絡的なものではない。脂肪酸だけではなく、ごはん、パンなどに含まれる糖質もやはり中性脂肪に変わる。要するに「食べすぎ」なのである。

一方、アルコールはどうか。肝臓でアセトアルデヒドに分解され、その後、酢酸に変わって中性脂肪になる。

脂肪肝かどうかを早く知るには血液検査でGOT、GPT、γ―GTPの数値をしっかりチェックすることだ。原因によってパターンも決まっている。

アルコール性肝障害ではγ―GTPが100、GOTが60、GPTが40といったようにγ―GTPとGOTの2つが基準値をオーバーする。脂肪肝ではγ―GTPが20、GOTが50、GPTが100というように、GPT値がグンと高くなる。これにアルコールも加わった脂肪肝では、γ―GTPが100、GOTが60、GPTが100と、γ―GTPとGPTの2つがアップする。

GOT、GPTの数値はともに基準値が40IU/dl未満。どちらかが少しでもオーバーしていれば肝障害が起きている状態なので、原因を調べ、しっかり生活改善することが重要だ。

 

食生活のワンポイント

お酒は日本酒に換算して4~5合を4~5日飲み続けると、もうそれだけで脂肪肝になる。改善するには飲まないに限る。禁酒を1カ月も続けると肝臓はよみがえる。脂肪肝にならないようにお酒を楽しむには、週に2日は“休肝日”をつくることだ。

次に食事。1日1食は魚をメーンにした食事を摂るのがよい。それも背の青い魚がおすすめである。中性脂肪を減らすように働くEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が多く含まれているからだ。

魚料理は酒の肴にもうってつけだが、より健康的にお酒を楽しみたい向きには、ビタミン、ミネラルを十分に摂取することを考えてもらいたい。お酒を飲むとビタミンA、B1、ナイアシン、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、セレン等が不足がちになる。それを補う食材としてすすめたいのが、カキ、マグロ、豚レバー、大豆製品、ゴマ、ホウレン草など。

また、肥満気味を含めてそれ以上の人は、4~5キログラムやせるだけで、肝機能は改善される。摂取カロリーが計算できなければ、食事をトータルで20%程度減らすとそれだけでかなり改善される。