山陽新幹線での居眠り運転は、まだ記憶に新しいだろう。あの報道で「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」が広く知られるところとなった。大惨事に結びつかなくてよかったが、睡眠障害によるものとしてはこれまで数多くの事故が報告されている。

スペースシャトル・チャレンジャーの大惨事、エクソン社所有のタンカー「バルデス号」の米国最大の原油流失事故、チェルノブイリ原発の大惨事など、まさに大惨事の陰に睡眠障害あり、である。

大惨事ばかりでなく、私たちの身近なところでは交通事故が多発している。その交通事故をSAS患者が起こす頻度が、米国のフィンドゥリー博士によって報告されている。それによるとSAS患者はすべてのドライバーの約3倍も事故を起こす頻度が高い。また、SAS患者は患者ではない人と比べると約7倍も事故頻度が高いのである。

このように大きな悲劇を招きかねないSASとは、「日中に過剰な眠気があり、7時間の睡眠中に10秒以上の呼吸停止が30回以上(1時間に5回以上)あるもの」と定義されている。原因の多くは肥満によるケースで、そのためSASは「生活習慣病」という声もあがっている。SASは高血圧、不整脈、心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こし、その点での危険性も極めて高い。

早期発見はベッドパートナーによることがほとんどで、発見されると睡眠障害外来や睡眠障害センターを受診する。

治療には内科的、外科的治療のほかに生活指導があるが、重症のSASでの第1選択肢は「CPAP」となる。鼻マスク式の器機で、これをつけて眠ると夜中に呼吸が停止したときに圧のかかった酸素が流れ、気道を開いてくれる。そのため、呼吸停止によって眠りが中断されることがなく、深い眠りが得られる。事実、これを使った患者は、昔と同じようなさわやかな目覚めを体験している。

いま日本にはSAS患者は200万人といわれているが、事故以外に「流産」にもSASが関与していることを、愛知医科大学教授で附属病院睡眠医療センター部長の塩見利明氏が強く啓発している。

女性SAS患者が妊娠した場合、低酸素血症が胎児に大きな影響を与える。つまり、酸素が胎児に届かないために流産してしまうのである。なにしろ、重症のケースでは8000メートル級の山の頂上にいるのと同程度の酸欠状態になっているのだから、当然である。流産の数%には、重症SASによるケースがあると、塩見教授は低酸素血症から胎児を守るべく声をあげている。

食生活のワンポイント

SASの予防、そして治療には食生活が実に大きなウエイトを占める。いわゆるダイエットである。

そのため、今回は肥満に結びつく“やけ食い、ドカ食い、ながら食い”の防止法をアドバイスしよう。

1、食事記録ノートをつくる!
毎日の食事内容、どんな物をどれだけ食べたかを記録する。おおよそのカロリーも記入し、1日の総カロリーを出しておく。はじめは面倒でも、体重が減り始めると嬉しくなり、食事記録をつけるのも楽しくなる。これが自然とやけ食いやドカ食い、ながら食いを防止してくれる。

2、冷蔵庫はガラガラに!
毎日買い物をするようにして、冷蔵庫に余計な食べ物は入れないようにする。

3、テレビの周辺に食べ物を置かない!
ながら食いの1番の問題は、カロリーの高いスナック菓子をテレビを見ながら食べてしまう点にある。これをシャットアウト。

4、行動修正療法を行う!
ちょっとやせ始めた人は、最も太っていたころの写真をドカーンと部屋に貼っておく。もうこの姿には戻りたくない、と思うので、よりしっかりとダイエットをするようになる。