ガンの死亡者数が年間30万人時代を迎え、2010年には40万人に限りなく近づくといわれている。

部位別では死亡者の多い順に肺ガン、胃ガン、大腸ガン……。その中で今後、とりわけ大腸ガンが増加すると予想されている。

その大腸ガンの早期発見のために、集団検診や人間ドックを受ける人が非常に多くなった。その際、多く発見されていることで注目されているのが大腸ポリープである。

あたかも病名のようだが、実はそうではない。ポリープは、粘膜面に盛り上がった病変の総称だ。ポリープ自体は食道、胃、胆のうなどにできるが、大腸にできたポリープをそう呼んでいる。

大腸ポリープはどれも性質が同じではなく、いくつかに分類される。まず「腫瘍」と「非腫瘍」。そのうちの80%が腫瘍だ。さらに、腫瘍は「腺種」と「ガン」に分けられ、腺種が80%を占める。腺種は良性ではあるが、大きくなるに従ってガン化する可能性が高くなる。ガン化率は、直径6~10ミリで3%、11~20ミリで20%、21ミリ以上で30%である。

また、大腸ポリープが多くできるのは直腸とS状結腸で、この2カ所で約70%を占めている。

便潜血検査、注腸造影検査、大腸内視鏡検査で大腸ポリープが発見されると、治療は「内視鏡的ポリペクトミー」「内視鏡的粘膜切除術」「手術」の3通りが行われる。

内視鏡的ポリペクトミーの対象となるのは、隆起したタイプのポリープである。大腸ポリープの中では最も多い。肛門から内視鏡を入れ、先端からループ状のワイヤを出して、それをポリープにかけてギュッと締め、高周波電流を流して焼き切る。

最近では100倍にズームアップできる拡大内視鏡も登場し、検査の時点でポリープの良性、悪性、つまり切除すべきか否かの判断ができる。そのため、切除しなくてもよいポリープまでも切除することはなくなりつつある。

内視鏡的粘膜切除術では、扁平タイプのポリープを対象とする。ポリープの下に生理食塩水を注入して盛り上げ、あとはポリペクトミーと同じ手順を踏む。

手術となるのは、ポリープの大きさが30ミリ以上あったり、ガンの進行が疑われるケースだ。その場合は、開腹しないで腹部に小さな孔を4カ所あけて行う腹腔鏡手術や開腹手術が、状況に応じて選択される。

1度ポリープが発見されて治療をした人は、2年に1回は内視鏡検査を受けるべきである。大腸ガン予防には内視鏡検査が最も効果的だからである。

 

食生活のワンポイント

大腸ポリープ、大腸ガンは食生活と大いに関係がある。日本人の食生活はどんどん欧米化し、肉類が多くなるのに反比例して食物繊維の量が減少。昭和30年には1日平均21グラムの食物繊維を摂取していたのが、今日では15グラムというありさまだ。

食物繊維の摂取量が減少することで大腸ポリープが増えるのは、食物繊維が水分やコレステロールのみならず、発ガン物質や細菌なども取り込んで排出してくれていたのが、その働きがスムーズにいかなくなるからだ。

大腸ポリープの予防に重要な食物繊維は、以下の食品に多く含まれる。ひじき、ワカメ、昆布、椎茸、キクラゲ、干し柿、栗、かんぴょう、さつま芋、里芋、切り干し大根、ライ麦パン、バナナ、キウイフルーツ、大豆、小豆、そら豆、おから、納豆、枝豆……。

食材を見ると豆類、大豆加工食品、海藻類、キノコ類、山菜類、果物類、芋類、野菜類、穀類に多いことがわかる。

このような食材を積極的に摂取し、加えてヨーグルトなどで腸内にビフィズス菌を代表とする善玉菌がすみつく腸になると、大腸ポリープの心配は限りなく少なくなる。大腸ポリープの予防は食生活にあり。