世の中には、さまざまな情報が流されているが、何と駅構内や地下通路にあるトイレの場所を記した“トイレマップ”もある。
この情報を欲しがっている人が多いからで、必要としているのは「過敏性腸症候群」に悩まされている人々。その数、10人に1人と推測されている。
過敏性腸症候群は腸そのものに何も異常がないにもかかわらず、腹痛を伴った下痢や便秘、またはその両方を交互に引き起こしてしまう疾患である。
かつては「慢性腸炎」や「慢性下痢」といった病名で片づけられていた。過敏性腸症候群の概念が米国から入ってきたのは戦後のことで、それまでの日本にはストレスの“ス”の字すらなかったからだ。今日ではストレスが原因との認識が定着しており、ストレスによって引き起こされる病気=心身症の中でも、非常に患者が多くなっている。
不安や緊張、興奮、恐怖などにも大腸は過敏に反応する。電車に乗っているときに、お腹がおかしいと思って緊張したり不安になると、さらに大腸の動きは活発になる。そして下痢になってしまう。
このような経験のある人は少なくなく、重症のケースともなると、各駅に停車するごとにトイレに駆け込む人もいるほどだ。トイレに行きたくてもトイレがなくていけない。そんな状況下に置かれたときに症状は現れる。
過敏性腸症候群の国際診断基準は「ローマ基準」といわれている。1~3のすべてにあてはまる場合、過敏性腸症候群であることは疑いようがない。
1、腹痛や腹部不快感がある。
2、腹痛や腹部不快感が、過去1年間に12週以上あった(1週間に1日でも過敏性腸症候群の症状があれば、それも1週間と数える)。
3、abcの3項目中、2項目以上あてはまる。
a、腹痛、腹部不快感は排便後には消える。
b、腹痛、腹部不快感は排便回数の増減の変化によって始まる。
c、腹痛、腹部不快感は便の形状の変化をきっかけとして始まる。
40代、50代ともなると、この症状が過敏性腸症候群以外の疾患から起こっているケースもあるので、その場合はさまざまな検査を行いながら、消去法で確定診断に結びつけることになる。
治療としては、過敏性腸症候群について十分に理解してもらった後、「薬物療法」「生活改善」「ストレス解消」を行うことになる。状態を見てカウンセリングも追加される。ストレスの原因がはっきり特定できれば、できるだけそれを排除することも重要になってくる。