脳卒中は「冬に多い」と思っている人は少なくない。しかし、今は多少ではあるが、8、9月に多い傾向が見られる。

脳卒中は、脳出血と脳梗塞に分けられる。かつては脳卒中の中でも、血管がもろいために冬の寒い時期に起こる脳出血が多かった。ところが、今日では食生活が豊かになって栄養が行き届いたために日本人の血管が強くなり、血管が詰まるために引き起こされる脳梗塞が多くなっている。夏から初秋に多いのは、この時期、血液がよりドロドロになるからだ。

今回取り上げた脳梗塞は、さらに3つに分けられる。種類別に見てみよう。

 

アテローム血栓性脳梗塞

悪玉と呼ばれているLDLコレステロールが関係する脳梗塞。この悪玉コレステロールが酸化して酸化LDLコレステロールになり、血管壁の内部に入り込んで粥状の塊、アテロームをつくる。アテロームが血管の壁にできることで、血液の通り道は狭くなる。そのために狭くなった部分が詰まったり、頸動脈などの血栓がはがれて流れ、狭くなった部分にフタをするように詰まるのがこの種の脳梗塞だ。高脂血症のほかに高血圧、糖尿病、肥満なども大きな原因になる。

 

ラクナ梗塞

脳動脈から枝分かれした末梢脳動脈に、高血圧で強い血流が当たり続けると、脳動脈同様、動脈硬化を起こす。そこに血栓が詰まるのがラクナ梗塞である。

 

心原性脳塞栓症

心臓病の中でも、心房細動という不整脈が原因となって起こる脳梗塞。心房細動では心臓が正しく脈打たず、細かく震えるようになってしまう。このとき心臓内に血栓ができ、それが脳動脈に詰まってしまうのが心原性脳塞栓症だ。長嶋茂雄氏がかかったのも、これである。

いずれの脳梗塞も、あとから「そういえば……」と思い当たるサインを30%程度の人々が経験している。激しい頭痛は伴わなくても、食事中に箸を落とすといった運動障害、両目の視野の一部が欠ける視野障害、言葉が出なかったりする言語障害などの症状だ。これらのサインは10分から長くても2時間ほどで消えることが多い。このとき治ったと勝手に決めつけず、すぐに神経内科や脳神経外科を受診するのが正しい対応である。

アメリカでは、患者が脳梗塞を起こして3時間以内に治療を行うのが基本だ。日本でもその点は同じだが、患者が脳梗塞と気づかずにいるケースが多く、病院へ行くのが遅れるようだ。
さらに今は脳梗塞の治療とともに、すぐにリハビリを行うのが常識になっている。このリハビリへの取り組みが快復の度合いを飛躍的にアップしている。

 

食生活のワンポイント

脳梗塞の予防には、バランスのよい腹8分目の食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレス解消、お酒は1合までを適量とし、禁煙をするのが大事。さらに、食生活では「魚を中心にする」ことをお勧めする。

1980年から94年にかけて、米国で女性看護師7万9839人を追跡調査したコホート研究(長期継続観察調査)が発表された。魚の摂取と脳梗塞との関係についてである。魚の摂取が「月に1回」の女性の脳梗塞リスクを1とする。魚の摂取が「月に2~3回」ではリスクは0.93、「週に1回」では0.78、「週に2~3回」では0.73と、摂取が増えるにしたがってリスクは下がっていく。さらに「週5回以上」とほぼ毎日魚を摂取している人たちでは、リスクは何と0.48にまで低下した。

日本人の食卓はどんどん西洋化しているが、逆に米国では「魚を食卓に!」という動きがある。他の研究でも、サンマ、マグロ、サバ、アジ、イワシといった青背の魚がよりよいことがわかっている。血液をサラサラにしてくれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富に含まれているからである。