ある日、突然、足の親指の付け根が痛くなり、そのうち足の甲も腫れ上がって、歩けないほどの激痛に襲われる。「痛風」である。日本人にはこの苦しみを味わった人が50万~60万人いるといわれている。
痛風は血液中の尿酸が増えすぎた状態の「高尿酸血症」が進み、発作を引き起こす病気だ。痛風とその予備軍である高尿酸血症の人を含めると、成人男性の5人に1人といわれ、患者・予備軍の多い生活習慣病のひとつである。
とりわけ、夏場にゴルフをした翌朝、病院にかつぎこまれる人が多い。痛風は尿酸値が高くなって起こるのだが、ゴルフには尿酸値をアップさせる原因が数多くそろっているからだ。
1、昼食時に、ビールをガブガブ飲む。 ビールには、尿酸のもととなるプリン体が多く含まれている。
2、やはりプリン体の多い石焼きステーキなどを、パワーをつけるために食べてしまう。
3、汗をぐっしょりかいて、体内の水分を排出してしまう。
以上の結果、尿酸値がぐんぐんアップして、発作を招いてしまう。
その問題となる尿酸とは、体内の新陳代謝により産生される物質で、基準値は7mg/dl以下。尿酸の原料はプリン体と呼ばれる物質である。
プリン体は細胞の中の核酸の構成物質なので、古くなって細胞が破壊されることによって生じる。また、急激なエネルギーの消費や、プリン体を多く含んでいる食品を摂取することでも増加する。
このようにして増えたプリン体は肝臓で分解され、その際に尿酸がつくられて、腎臓から排出される。このとき、体内の尿酸は「つくりすぎる」ことによって増加するだけでなく、「排出がうまくいかない」ことによっても増える。この両方を併せもつことで、尿酸値が上昇する人もいる。つまり、痛風が発症する原因は、尿酸のつくりすぎ、排出がうまくいかない、その両方の3つである。
問題は、医師からこのような説明を受けても“のど元過ぎて熱さ忘れる”人があまりにも多いことだ。実は痛風というのは糖尿病と同じで、それ自体が怖いというより、合併症が怖いのである。尿酸値が高いことで、「尿路結石」ができやすくなるし、肘、手の甲、かかとなどに大きな瘤のような「痛風結節」をつくる。そして、最も怖いのが腎障害。これを悪化させると透析療法にいたる。
そうならないために、痛風患者はしっかり治療を行い、高尿酸血症の人はしっかり予防に努めてほしい。「食生活の改善」「お酒はほどほどに」「有酸素運動をする」「1日2リットルの水分補給」「ストレス解消」が予防の5大原則である。
食生活のワンポイント
まずは、早食い、大食いをしない。早食いは大食いにつながり、肥満にも結びつく。痛風患者にも多いパターンだ。お酒は飲みすぎない。とくにビールはプリン体含有量が多いといわれている。確かにそのとおりだが、飲みすぎればどれも同じと考えたほうが、食生活も乱れずに済む。
プリン体の多い食品を控えるようにする。1回に食べる量でプリン体の多い食品は、鳥・豚・牛レバー、大正エビ、アジ・サンマ・イワシの干物、イカ、マイワシ、カツオ、カキ、タコ、ニジマス、ニシン、マグロなどである。毎朝食時に干物を食べている人にとっては「冗談じゃない!」という気持ちだろう。しかし、要は食べすぎずに、バランスよく食べることである。毎朝アジやイワシの干物にするのでなく、鮭を焼いたり、卵料理を加えたりと、1週間のメニューをバラエティに富んだものにする。このようにして、プリン体の多い食事を自然に減らすことができればつらくない。
野菜を十分に摂取する。1日300グラムは食べるように。しかも各色の野菜をバランスよくとってほしい。