日本人のガン死亡者数は、年間30万人時代に突入した。もちろん、死亡原因としては圧倒的1位である。
臓器別には1、肺ガン(年間死亡者数5万6405人)、2、胃ガン(同4万9213人)、3、大腸ガン(3万7668人)の順(2002年)。だが、患者数でみると、胃ガン患者が26万人で、2位の大腸ガン22万8000人をしっかり抑えて1位となる。
胃ガンの場合、患者数が多いのに、死亡する人が少ないのは、早期ガンで発見されるケースが70%と極めて高くなっているからだ。そして、早期に発見されると、より体に負担の少ない治療法が選択できる。
ガンが胃壁の最も内側の粘膜層に留まっており、直径2センチ以下ならば「内視鏡的粘膜切除術」が行われる。
この手術では、内視鏡を口から胃へ入れて、術者はモニターを見ながら手術を行う。ガン病巣の下に生理食塩水を注入して隆起させ、内視鏡の先端からスネアといわれるループ状のワイヤを出して病巣にかけ、ワイヤを締めて高周波電流を流し焼き切る。
ガンの大きさが直径2センチを超えると腹部に3から4カ所の孔(あな)を開け、そこから手術に必要な器具を入れてガンを切除することになる。腹腔鏡下手術である。この域を超えると開腹手術になる。
しかし、人々はより体にやさしい手術を求めているので、ガンの直径が2センチを超えても粘膜ガンであれば「内視鏡的粘膜切除を!」と願う。
その声に応え、新しい内視鏡手術が注目を集めている。ITナイフ、フックナイフ、細径スネア、三角ナイフなどを用いて胃粘膜を切開・剥離する方法である。
まずは口から内視鏡を胃に入れ、ガン病巣の下にヒアルロン酸を注入して浮き上がらせ、切除範囲を決めて針状ナイフで1カ所に孔を開ける。そこから高周波ナイフの先端に小さなセラミック球のついたITナイフを入れてガン病巣周辺を切っていく。切除する外周を切り終えると、粘膜が縮み溝ができる。その溝からITナイフを粘膜下に入れて粘膜を剥離する。これがITナイフによる「粘膜切開剥離法」である。
すでに国立がんセンターでは直径10センチの胃粘膜ガンに対し、粘膜切開剥離法を成功させている。
ただし、このITナイフは標準治療ではないので、治療を受けた場合の最終責任は患者自身にある。十分に納得してから受けるようにし、不安がある場合は他の選択肢を考えたい。
食生活のワンポイント
胃ガン予防には、まずは「ヘリコバクターピロリの除菌」が考えられる。胃にすみついているヘリコバクターピロリことピロリ菌は、胃・十二指腸潰瘍の再発に関与しているので除菌治療の保険適用が認められている。
このピロリ菌、実は胃ガンにも強く関与していることが科学的に裏付けられているものの、胃ガン予防での除菌は保険が認められていない。
日本人の40代以上の人々のピロリ菌感染率は80%を超えているので、「胃ガン予防の点からも保険が適用されるべき」と訴える胃ガン専門医は多い。
食生活では、何といっても塩分の摂取量をグンと減らすのが1番。日本人の1日の塩分摂取量は平均12グラム。WHO(世界保健機関)は1日7グラムと指導している。日本人も1日7グラムを目指すべきである。
また、緑茶を1日10杯程度は飲むように。“緑茶の栽培地は胃ガン死亡率が低い”という疫学調査があるからだ。
さらに、完熟トマトを生のままどんどん食べよう。トマトの色素成分のリコピンが「胃ガン予防」に有効に作用していることが、アメリカの研究でわかっているからである。