新型コロナウイルスによる集団感染で13人の死者が出た豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」。乗客が不安な日々を過ごす中、妻と2人で乗船していた小柳剛さんは「乗客に接する厚生労働省とクルーズ船スタッフに決定的な違いを感じた」という——。
※本稿は、小柳剛『パンデミック客船 「ダイヤモンド・プリンセス号」からの生還』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
船内でPCR検査を受けたが、いつもと違った
2月15日 6時半起床 8時半朝食。
11時半、突然なんの予告もなくドアがノックされ、開けると白い防護服の検疫官が2名立っていた。70歳以上の方とその同室者に、感染の有無を検査させてほしいという。
PCR検査だ。19日の下船に向けての準備かと質問すると、そうだとの答え。結果は陽性ならすぐ知らせる(2、3日後)、陰性なら告知はナシで指示にしたがって下船してくれ、陰性の告知は今の余裕のない状態ではできないという話らしい。私たち二人は素直に検査を受けた。口を開け喉の奥の粘液をとるだけ、検査はすぐに終わった。私たち夫婦ははじめ、素直に下船の日が近づいてきたことを喜んだのだが、変だと感じたのも事実だった。
この変だという具体的内容は、後ほど厚生労働省が報道関係者向けに出したプレスリリースによってよりはっきりした。その前に前日と同様、橋本副大臣の船内放送があったのだが、聞けばかえって精神的に悪いと思い、私は適当に聞き流していた。内容はおそらく、下船にあたっての基本的考え、および検査順番だったと思う。後ほど部屋のポストに投げ込まれていたプレスリリースが同じことを伝えていた。プレスリリースは日本語と英語で書かれていた。