※本稿は、小柳剛『パンデミック客船 「ダイヤモンド・プリンセス号」からの生還』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
タオルがワンセット届くことが、このうえない驚き
2月13日 6時半起床 8時半朝食。
しかしコーヒーは朝食がとっくにすんだ四十分遅れで到着。このようなこともあるだろうと考え、インスタントですませていた。しかし配られたコーヒーのほうが断然美味しい。
10時、隔離されてはじめてタオルがワンセット届く。通常なら普通のことが、こんなことがあるのかと、このうえない驚きだった。次に妻は、漢方薬を処方してくれている品川の病院に電話をする。自分のおかれている事情を話し、先生に薬を処方してもらうことが可能かどうか、可能なら息子に取りに行かせるがそれも可能かを尋ねた。
すぐさま病院の方はOKを出してくれた。この情報を得ることは、今日薬が手に入らなかったときの予防手段として、押さえておきたかったことだ。
13時30分、船内放送。
〈厚生労働省から連絡があり、80歳以上の窓のない部屋にいる方を対象に検査(PCR検査)を行った〉
この内容の船内新聞が後ほど届いた。そこに書かれていることを記そう。英語、日本語、中国語、スペイン語で書かれたものだ。
英、日、中、スペイン語の「船内新聞」が伝えたこと
〈厚生労働省からプリンセス・クルーズに以下のように通知があったことを皆様にお知らせいたします。 ・バルコニーのないお部屋に滞在中の80歳以上のお客様、または慢性持病をもつ80歳以上のお客様からすでに検体を採取しました。
・陽性反応の出たお客様を陸上の医務機関へ搬送し、検疫期間を続けます。陽性反応の出たお客様と近い接触のあったお客様に関しましては、現時点では下船できません。
・陰性反応の出たお客様には次のどちらかの選択肢がございます。船内客室に残られること、もしくは下船をし、かつ日本政府管理の施設にて感染症の潜伏期間が過ぎるまでお過ごしいただくこと。
・ダイヤモンド・プリンセスにおける検疫期間は続き、厚生労働省から必要と判断されたお客様より検体を回収します。検査結果は後ほどお知らせいたします。私共は、日本政府と連絡を取り続け、日本政府からできるだけ多くの情報を頂き皆様に共有いたします。また、厚生労働省より最近の検査で44人のお客様から陽性反応が出たと通知されました。毎度のように、詳細が分かり次第皆様にお知らせいたします。皆様のご理解とご協力に心より御礼申し上げます。〉
厚生労働省とプリンセス・クルーズ社の関係はいったいどのようになっているのだろう。このような文書は厚生労働省が直接出すべきものと思うのだが、出したのはプリンセス・クルーズ社である。