新型コロナウイルスによる集団感染が発生した豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」。乗客の小柳剛さんは2月20日に下船したが、厚生労働省の対応に疑問を感じたという。「『公共交通機関は使わないでください』と言いながら遠い場所で降ろされ、帰宅時は鉄道を使わざるをえなかった」――。
※本稿は、小柳剛『パンデミック客船 「ダイヤモンド・プリンセス号」からの生還』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
下船日を当日に知らされる混乱ぶり
2月20日
6時半起床。起きて早々、気になっていたのだろう、妻がポストを念のため確認する。下船案内と上陸許可証が入っていた。下船案内、正確には「下船に関する情報」という文書一枚。書かれていることは、下船の前夜、2020年2月20日に準備するもの。下船の当日、2020年2月20日に行うことが記載されている。前夜と当日が同じ日付になっている、どっちが正しいのだ。
すぐさまフロントに電話。下船の前夜の日付は2020年2月19日の間違いだと言う。では下船日は正しいのかと聞くと本日20日との答え。7時半までに荷物にタグをつけ廊下に出せと言う。荷造りはこれからなのに無理に決まっているじゃないか、どうして通知書を昨日ちゃんと届けてくれないのか、ほぼ怒鳴り声で言う。フロントの男性は慣れたもので、声色を変えずに、ではできるだけ早くにと言いかえる。荷物につけるタグの枚数が足りないので、持ってきてほしいというところで電話は終了。
まず落ちつこう。歯を磨き、顔を洗うことでルーティンの行動にもどろう。偶然なのだろうか、今日は朝食が早くに来た。しかし先に、前日荷造りの終わっていた荷物にタグをつけ廊下に出す準備。タグには一枚一枚、住所、電話番号を記入しなければならない。マットを入れて4個分廊下に並べる。