SNSに投稿する新しいネタに困っている
手に力を込めるだけでなく、美しく見せるための製作技術も要求されるクリエイティビティの高い活動であり、外出自粛中の今だからこそ、じっくりと取り組む人が増えたのではないでしょうか。
さらに3つ目の理由は「手を使う脳への刺激効果」です。これはアートセラピーやそば打ちなどにも通じるところがあるのですが、手作りパンを取り組むうえでは手先を使うことで脳への刺激があると言われています。「手は第2の脳」「手は外部の脳」などと言われるほど脳との密接なつながりがあり、手をよく使うことで大脳の3分の1に及ぶ領域を刺激することになります。近代調理器具は「手間いらずで時短」と省力化を進めてきましたが、ここへ来て自宅での時間を得た現代人がパン作りを通じた触覚刺激に回帰しているものと考えます。
最後、4つ目の理由には「SNSの存在」があります。人の動きが止まり、経済活動を止めて感染拡大防止に努める今、人々は「新しいネタ」に困っています。ニュースもコロナの話題ばかりで辟易としている今、おのおのの自宅内でパン作りという創造性の末の成果物を、SNSを通じて品評し合うのはニュースの創出と言えます。
パン作りは「デジタルデトックス活動」の一環
単にパンという食品を作るにとどまらず、そこには親子の人心交流なども見られて、見ている人に癒やしを与えるでしょう。
このような4つの事情により、人々は手作りパンにハマっていると考えます。
以前からITテックの総本山、シリコンバレーでは、パン作りなどに勤しむ人が増えてきていることが話題になっていました。テクノロジーとロジックの世界で疲労した心と脳を癒やすために、彼らは「デジタルデトックス活動」の一環として手先を使って無心になれるこのアクティビティにハマっています。
何かと予想外の展開が続くコロナ禍、今は世界中でおうち時間をパン作りに染め上げているのです。