ポスト安倍は「叩き上げ男」か
その人物とは、菅官房長官だ。これまで「ポスト安倍」としては石破茂元幹事長や岸田文雄政調会長らの名前が浮かんできたが、「衆院選による政権交代ができない状況を考えれば、トップ交代には一定の継続性が必要となる」(同)というのだ。現在は、首相や今井首相補佐官ら「Aチーム」との亀裂により指令系統から外されているといわれるが、菅氏は「『そんなものは泳がせておけばいい』と気にしていない」(官邸関係者)とされる。全省庁の情報が集まる官房長官を長く務め、二階俊博幹事長や公明党とも連絡を密にする「叩き上げの男」に期待する声は徐々に膨らんできているという。
コロナ危機で後手に回った政府対応は「菅外し」が影響しているとの評論が多くあることも待望論につながっていると思われるが、霞が関の中には「菅氏が登板すれば官僚を使いこなし、スピード感のある危機対応をできるのではないか」(政府関係者)との声があるのは事実だ。安倍首相との二人三脚で政権奪還を果たし、「番頭」として数々の危機管理に対応してきた菅氏がコロナ下で抱いている危機感は強いという。
それに比べて安倍首相や麻生財務相ら「政権中枢の危機意識はいまだ乏しい」(民放記者)とされ、こうした声も届いてはいないようだ。麻生氏は2012年の自民党総裁選の際、谷垣禎一総裁を押しのけて自ら出馬した石原伸晃幹事長(当時)を「平成の明智光秀」と批判したが、膨らむ「菅待望論」を前に何を思うのだろうか。