いつまで外出を自粛し、店を閉め、在宅勤務を続けなければならないのか
新型コロナウイルス危機で曖昧なのは、「出口」をどこに設定するのかという点だ。これまで安倍首相は「人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減できれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができる」と繰り返してきたが、その「出口」には触れてこなかった。感染者数や陽性率、死者数などがどの程度落ち着けば良いのか、その「目安」が設定されることはなく、自粛や休業をひたすら我慢する「出口なき戦略」を突き進んでいる。
いつまで外出を自粛し、店を閉め、在宅勤務を続けなければならないのか。学校はいつから再開されるのか――。安倍首相は4月末からの大型連休中に宣言の延長の是非を判断するが、緊急事態宣言を「解除」すれば感染再拡大のリスクをいかに防ぐのか、「延長」ならば日本経済への影響をどのように最小限に抑えるのか、その「目安」の設定とともに国民への説明が求められることになる。元大阪府知事の橋下徹氏は4月21日放送のTBS系「あさチャン!」で、経済活動再開の判断に関し「政治家はすごい覚悟のいる判断になる。でも、これをやるのが政治家だ」と指摘したが、この「覚悟」を首相が持てるか否かが日本社会の分かれ道となる。
国民のいのちがかかった場面で、自らの政治的な思惑にとらわれた判断
安倍政権の初動の遅れと迷走ぶりには、国民の厳しい視線が向けられている。マスコミ各社の世論調査結果を見ると、コロナ危機下の安倍政権の対応を「評価しない」との回答は毎日新聞(4月18、19日実施)で53%に上り、感染拡大防止に向けて首相が「指導力を発揮していない」は朝日新聞社(同)で57%に達した。内閣支持率も低下傾向にある。
一度は閣議決定までした減収世帯への「30万円給付」を急転直下、1人あたり「10万円の一律給付」に変更するなど、前代未聞の迷走ぶりは国民の不安を増幅させている。安倍政権に近い政治評論家の田﨑史郎氏は4月17日放送のTBS系「ひるおび!」で、「(公明党の)山口那津男代表が連立離脱をちらつかせながら、安倍総理に10万円のことを求めた。公明党は以前に閣議で署名したことと全く違うことをやって筋が通らないが、それが通ってしまった」と解説してみせたが、4月18日付朝日新聞は社説でこう厳しく指弾した。「政治指導者が、とりわけ国民のいのちや生活がかかった場面で、自らの政治的な思惑にとらわれた判断を下すようなことはあってはなるまい」。