廊下の電気を消す日本一の倹約経営者

岐阜羽島の駅から車で5分ほどのところにある、中堅の電設資材メーカー・未来工業の本社を訪れた人は、まずエントランスと廊下の暗さに驚く。天井の蛍光灯はどれも消されたままなのだ。

蛍光灯が消された未来工業の廊下。

蛍光灯が消された未来工業の廊下。

社員が働いているオフィスのなかに目を向けると、さすがに蛍光灯は点っている。でも、すべてというわけではない。空席の机の上の蛍光灯は消されていた。よく見ると、1つひとつの蛍光灯から紐がぶら下がっている。そして、その紐の先には名札やイニシャル入りのマスコット人形などがついていた。

「人のいない机の上をわざわざ照らしておく必要はない。席を外す際には、必ず自分の机の上の蛍光灯を消す。それを徹底させる狙いで、個々人が責任を持って管理する蛍光灯をはっきりさせている」と、同社の創業者でもある取締役相談役の山田昭男はいう。

普段なにげなく手を触れる壁に設置された電灯のスイッチの裏側には、電線を束ねる樹脂製ボックスが埋め込まれている。そのスイッチボックスで国内シェア8割を持つ未来工業は、業界内における高収益会社としても有名だ。2007年3月期は売上高316億円、営業利益40億円を見込む。業界トップの松下電工の営業利益率が5.2%なのに対して、同社のそれは倍以上の12.6%に達するのだ。

そうした高収益体質の企業体を築き上げた要因として、まずスイッチボックスのような強みを持つ製品を抱えていることがあげられる。でも、それ以上に開発、製造、営業、管理など全チームのコスト意識を徹底して高めていることを見過ごしてはならない。

山田は自称「日本一の倹約経営者」。同社のコストカットの矛先は、社内のあらゆる場所に向かっている。コピー機といえば、通常の会社では部署ごとに設置されているもの。それが同社の場合、約300名が勤務するこの本社にはコピー機が1台のみ。ドアノブも回すとロックがすり減るので、押したり、引いたりするだけで開け閉めできるようになっているというから、その徹底ぶりをうかがい知ることができよう。