最善の治療を受けるためには、どうすればいいのか。東京医療センターで総合内科医を務める尾藤誠司氏は「最善の治療は、患者の価値観や希望と、医師の専門知識の両方を考え合わせて実現する。たとえば『お任せします』とは言わないほうがいい」という——。

※本稿は、尾藤誠司『医者のトリセツ 最善の治療を受けるための20の心得』(世界文化社)の一部を再編集したものです。

真剣な眼差しでMRIの説明をする男性医師
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患者と「白衣の人たち」との間に溝がある

私は、都内の総合病院で「総合内科」という看板で医師をしています。総合内科という診療科名は聞きなれないかもしれませんが、要するに皆さんが体に変調をきたしたときに最初に会う医者、と考えていただければ結構です。そして、そんな立場で医者を続けている中で感じていることが、医療を受ける主体である患者さんと提供する側である医師や看護師など「白衣の人たち」との間にある、深くて大きな溝のようなものの存在です。

例えば、治療法を選択する場面で、“患者が気をつけたい言葉”の一つが、「お任せします」です。安易に使うと医師との間に認識のズレが生じ、思わぬ方向に進んでしまう事態になりかねません。

医師の説明を聞き終わると、いよいよ治療法の選択という重大な局面を迎えます。このとき、患者が医師に対して使いがちだけれど、安易に口に出してしまうと望まない結果を招きかねない危ない言葉が「お任せします」です。