日本一の生産量を誇る「リンゴのまち」だが…
青森県弘前市(人口約17万人)は2位以下に大差をつける日本一のリンゴ生産地だ。市内には道路の両脇にリンゴの木が立ち並ぶ「アップルロード」があるほか、JR弘前駅前には公園や広場にもリンゴの木があり、袋がけした実が育っていた。
また「弘前公園の桜」も全国的に有名だ。園内にそびえる弘前城は、天守・櫓・城門が重要文化財に指定されており、約2600本の桜と古城を楽しむことができる。
だが、今回紹介したいのは、城下町・弘前に根付く「コーヒー文化」についてだ。青森県内の喫茶店数(※1)は、東北では宮城県(県庁所在地は人口約109万人の仙台市)に次いで多いという。
県庁所在地・青森市(人口約28万人)を、コーヒー関連データ(※2)で見ると興味深い。
・「コーヒー飲料への支出」=全国1位 (2位は富山市)
・「コーヒー豆への支出」=全国13位 (1位は京都市)
・「コーヒーへの支出」=全国24位 (1位は京都市)
(※1)統計資料に従い、今回は「カフェ」でなく「喫茶店」に用語を統一
(※2)総務省統計局「家計調査」飲料データ:都道府県庁所在地・政令指定都市、2016年(平成28年)~2018年(平成30年)の平均
コーヒー飲料の支出額は全国トップだが、それ以外は上位ではない。缶コーヒーやペットボトルなどの加工飲料が好きなのだ。手軽さを好む市民性かと思い、現地の関係者に聞いたが、解明できなかった。また、青森市は弘前市に比べると「太平洋戦争で『青森大空襲』を受けたのもあり、情緒のある老舗喫茶店が少ない」(現地の複数の喫茶関係者)という。ちなみに県庁所在地・政令指定都市でない弘前市は、同調査には出てこない。
青森市も弘前市も人口はじわじわと減っている。「弘前の街も私の子ども時代に比べると、個人経営の店が減り、少し寂しくなった」(市内で育った30代の喫茶店店長)と聞いた。それでも弘前には、喫茶店やコーヒーに情熱を傾け、地域文化を発展させた店主もいる。