まず双方に「泥仕合にするな」と忠告したい
日産自動車前会長のカルロス・ゴーン氏(65)がまた、逮捕された。ゴーン氏の逮捕はこれで4度目。東京地検特捜部が保釈された被告を再び逮捕するのは、極めて異例である。
特捜部は4月4日午前6時前、都内のゴーン氏の住居を訪れて任意同行を求めて逮捕した。早朝の任意同行も異例だ。
特捜部は「日産の私物化を裏付けるもので、逮捕して捜査する必要性があると判断した。日産に与えた損害額も考慮した」としている。
これに対し、ゴーン氏は容疑を全面的に否認し、弁護側は「人質司法だ。痛めつけて検察に有利に運ぼうとしている」と検察の捜査手法を痛烈に批判した。
沙鴎一歩は昨年11月19日にゴーン氏が初めて逮捕されて以来、プレジデントオンラインに記事を書きながら事件の推移を見てきたが、検察とゴーン氏のどちらにも味方するつもりは全くない。それゆえ、まず双方に「泥仕合にするな」と忠告したい。
逮捕容疑はクルーザー「社長号」への私的流用だ
特捜部の発表などによると、再逮捕の容疑は会社法違反(特別背任)だ。
ゴーン氏は、2015(平成27)年から昨年にかけ、知人の経営するオマーンの販売代理店に巨額な資金を日産から支出させ、その一部を私的流用して日産に損害を与えた会社法(特別背任)の疑いがある。流用したとみられる資金は、計5億6000万円余りだ。
ゴーン氏と長年交際している知人が経営するオマーンの販売代理店に支出された巨額資金の一部が、この代理店のインド人幹部の個人口座を通じてレバノンのペーパーカンパニーに送金された後、一部となる計5億6300万円が、ゴーン氏の妻が代表を務める会社に送金されてクルーザー(「社長号」と命名されていた)の購入資金にあてられた疑いがある。このほか息子が経営するアメリカの投資関連会社側にも流れた疑いがある。
検察は資金の流れが複雑で、しかも海外の複数の会社を経由するなど隠蔽工作が行われていることから時間をかけて捜査を進めてきた。