「過去10年で最多ペースの急増」の背景

「はしか(麻疹)」が流行している。厚生労働省によると、3月10日現在の今年のはしかの患者数は計304人に上り、その流行は過去10年間で最多のペースだという。

はしかは風疹と同様に、感染力がとても強く、健康で体力のある人には大きな問題はないが、妊娠中の女性がかかると、流産や早産の危険が高まる。

ワクチンをきちんと接種して体内に免疫(抗体、抵抗力)を作っておけば、はしかは防げる。自分の身だけではなく、他人にうつすこともなくなる。

何故、予防接種を受けないのだろうか。自分だけは感染しないと思っているのだろうか。接種が面倒くさいのか。はしかのワクチン効果を疑っているのだろうか。感染が広まるのは、ワクチンを接種していない人が大勢いるからだ。

麻疹(はしか)の原因ウイルス=2017年10月27日(写真=BSIP/時事通信フォト)

感染力はインフルエンザウイルス以上

はしかの正体(病原体)は、麻疹ウイルスである。1万分の1ミリと小さく、電子顕微鏡でしかその姿を見ることはできない。

感染者の飛沫(せきやくしゃみで飛び散るしぶき)に含まれたそのウイルスに感染すると、10日前後の潜伏期間を経てかぜのような症状が出る。その後全身に発疹が現れる。飛沫を直接浴びなくとも、空中を漂う麻疹ウイルスによって空気感染(飛沫核感染)する。非常に感染しやすく、感染力はインフルエンザウイルス以上である。

症状が重いと、肺炎や中耳炎を起こす。1000人中1人の割合で脳炎にもかかる。脳炎患者のうち15%が死亡し、25%が脳性まひなどの重い脳障害を残す。大人になってから感染すると、症状が重くなることがある。はしかは決して侮ってはならない感染症である。

感染して発症した場合、特効薬はない。それゆえはしかには感染予防が重要だ。だが、手洗いやマスクでは予防はできない。予防にはワクチン接種が欠かせない。