感染が拡大すると健康弱者が犠牲になる

感染症が流行すると、必ずその先に致命的な打撃を受ける健康弱者がいる。通常、健康弱者とは基礎疾患(高血圧、心臓病、糖尿病など)を持つ患者や体の弱い高齢者を指す。インフルエンザでは高齢者がいつも犠牲になる。それゆえ厚労省や保健所は高齢者に注意を呼びかけ、ワクチン接種を促している。

冒頭で、はしかは風疹と同じように「妊娠中の女性がかかると、流産や早産の危険が高まる」と指摘したが、その風疹は昨秋から流行している。

風疹の場合、健康弱者に相当するのがお母さんのおなかの中にいる赤ちゃんだ。お母さんが妊娠初期に風疹にかかると、赤ちゃんの心臓に穴が空いたり、耳が聞こえなくなったりする。障害で発育が遅れ、最悪の場合、死産するケースもある。専門的には先天性風疹症候群(CRS)と呼ばれている。

生まれてきたわが子が重い疾病を抱えていると知ったとき、親は途方に暮れるし、赤ちゃんにとっても苦労の多い人生となる。

厚労省によると、風疹は2012年から2014年にかけて大流行し、この3年間で少なくとも計1万7000人以上の患者が出た。その結果、45人の赤ちゃんがこのCRSに罹患し、うち11人が亡くなっている。

風疹もはしかと同様にワクチンで予防できる。

ワクチンの副反応に対する集団訴訟で法律が変わった

はしかのワクチンの効果は高く、評判もいい。

ただ一般的にワクチンには副反応がある。はしかのワクチンの場合、国立感染症研究所によると、麻疹ウイルスの毒性を弱めた生ワクチンであることから10%の接種者に発熱などの一時的な症状が出る。100万~150万人に1人以下の割合で脳炎・脳症を引き起こすこともある。

現在のはしかのワクチンは、風疹ワクチンと合わせたMRワクチンが主流だ。以前は、はしかと風疹、おたふくかぜのワクチンをひとまとめにした3種混合のMMRワクチンが使われていた。

しかし、3種のうちおたふくかぜのワクチンに問題があり、無菌性髄膜炎の副反応が多発し、導入の4年後にMMRワクチンは接種を中止した。集団訴訟も起き、前述した1994年の予防接種法の改正につながった。

基本的に予防接種は効果と副反応とをよく考えて判断する必要がある。