80歳まで年金月10万で“住居費”10万の地獄
家族3人がそろって筆者の相談ルームにやってきました。
すでに独立し実家から電車で30分のところに住む長男(42)は少し緊張した表情でした。母親(66)もややうつむき気味でしたが、現在無職で母親と同居する長女(38)は比較的落ち着いているように見えました。
先日、長男は母親から現在1140万円の残高がある住宅ローンが今後払えなくなるかもしれないと相談され、親の収入や貯蓄、年金の受取額などを確認したといいます。収入は、年金が1カ月あたり約10万円、貯蓄は220万円しかありませんでした。
長男は、母親とひきこもり生活を続ける長女の顔を見に、たまに実家を訪れていたそうですが、深刻なお金の問題を抱えていることに気が付かなったそうです。
母親 66歳 年金収入月額10万円 貯蓄残高220万円
長男 42歳 独立
長女 38歳 同居。無職。
住宅ローン残高:1140万円
マンションの資産価値:1500万円(諸費用引き後)
「マンションを売却すれば、なんとかなるのでしょうか?」
長男は筆者にこう切り出しました。
「マンションを売却すれば、なんとかなるのでしょうか? 母親だけなら引き取って同居も考えていますが、私にも妻子があり、これから子どもたちの教育費もかかります。自分たちのライフプランを考えると、母親の面倒を見るだけで精一杯な状況です」
聞けば、23年前、父親は母親が43歳の時に病気で亡くなられたそうです。賃貸暮らしだったこともあり、受け取った死亡保険金1000万円のうち半分超を頭金に使い、45歳の時に返済期間35年で2500万円のローンを組んで購入しました。
完済時の年齢は80歳です。この話を聞き、疑問が湧いてきした。
筆者:「ローンを組んだ時に、80歳まで住宅ローンの返済が続くことに不安を抱かれませんでしたか?」
母親:「当時、正社員として収入があり、働くことは苦ではなかったので、何歳でも働ける間は働こうと思っていました。また、遺族年金もあり、なんとかなると思っていました」
母親が45歳の時、長男は大学3年生。教育費にかかる費用もそろそろ終わりかけており、家計が随分と楽になると考えたこともローンを組んだ理由のひとつ。確かに退職時まで着実に貯蓄を増やして、70歳、75歳まで元気で働くことができれば完済は可能だったかもしれません。